いつか来るその日。親の老いという現実を受け入れるための、5つの心理学的ヒントとは?
今後どう暮らしたいか、親に聞く。
親と率直に話せる関係であれば、老いをどう感じているのか、残りの人生をどう過ごしたいのか、話し合うことが大切だとふたりの専門家はアドバイスする。「自立して暮らせなくなった時に何を重視するのか、話し合うのもいいでしょう」と臨床心理士のブノワは言う。親がその話題を嫌がらないのなら、もっと踏み込んだ質問をしてもいい。子どもとの関係はどう考えているのか、介助が必要になったらどうするのか、葬式はどうしたいと考えているのか、葬式で流してほしい音楽はあるか等々。考えるのも辛いことだが、そうしたことに備える機会であると同時に、自分の両親と濃密な時間を過ごし、心配していることを伝え、愛情を確認する機会となるだろう。 このような会話を通じて親は、子どもたちをもっと頼ってもいいのだということに気付くかもしれない。そのことに気付かず、子どもの負担となることを恐れている親もいる。そうなるとお互い不安でしかない。「亡くなった時のことばかりでなく、生きている間のことも話し合えるといいですね。もっと頼ってくれてもいいこと、問題が生じたら一緒に考えていきたいことを伝えましょう。きょうだいがいる場合は、それぞれの子どもが親と話し合ってどう考えているのか、どこまで手伝えるのかを伝えなくてはなりません」と医師のエレーヌはつけ加える。
親を見下さない。
障害を持つ親を介護する人のなかには、「親の親になっちゃった」と茶化す人もいる。「でもそれは正しくありません。この場合、大人が大人を世話しているのであって、親になったわけではありません。きちんと区別して、余計な責任を背負わないことです」と医師のエレーヌは言う。両親を子ども扱いするのも良くない。「たとえ年をとっていても、障害があっても、彼らは大人です」と臨床心理士のブノワは言う。「認知症が進んでいたり大きな精神疾患がある場合はともかく、親は自律した存在であり、意思決定をする権利があります」 親が精神的にも肉体的にも、できるだけ長く健康を保ち、自律した存在でいるためには年寄り扱いをしないほうがいい。そのことは医師のエレーヌも同意する。「親は、なんらかの制約があっても大人として行動し、暮らしていける存在です。弱い存在だと子どもが考えはじめたら、その考えが伝染して親も、自分が実際よりも弱い存在だと思うようになるのです」。老いると考えがつい、死に向かいがちだが、発想を転換して親も子も、人生のこの時期をいかによく生きられるかと考えることが重要だ。運動をすること、健康的に暮らすこと、社会との繋がりを保つことが、より良く年を重ね、長生きするのに役立つ。スポーツ、ウォーキング、料理、外出など、いろいろなことを親子で一緒に楽しむ機会を作ってみてはどうだろう。
text : Lena Couffin (madame.lefigaro.fr)