いつか来るその日。親の老いという現実を受け入れるための、5つの心理学的ヒントとは?
判断力が低下し、ひとりでできないことが増え、病気がちになる......親が老いたことを目の当たりにすると、子どもとしてはいくつになってもショックだし、辛く思う。心穏やかに過ごすためにはどうしたらいいのだろう。フランス版「マダムフィガロ」の記事をご紹介。 いま続々と明かされる、ハリウッドセレブたちの「更年期」 親は老いていく。それを頭で理解することと、実際に目の当たりにすることは別問題だ。いくつになろうとも、痛々しい現実から目を背けたくなり、心穏やかではいられない。 「一定の年齢になった子どもは、親が老いて弱くなったことにある日突然気付き、がく然とします。親がそれまで元気だったらなおさらです」と臨床心理士のブノワ・ヴェルドンは言う。彼は『Le vieillissement psychique(原題訳:精神的老化)』(Que sais-je刊)の著者でもある。親の老いという現実を突きつけられた子どもの反応はさまざまだ。それまでの親子関係に左右されると言っていい。「親との楽しい思い出がある人もいれば、喧嘩した記憶しかない人もいます。親から将来の助言や励ましを受けた人もいれば、もう親に煩わされずに生きたいと思っている人もいるでしょう。こうした相反する感情が老親への態度に影響します」 親の老いによって子どもにどんな感情が生じるのだろうか。親の変化をどう受け入れて関係を築いていくべきなのだろうか。
親とて全能ではないことを受け入れる。
親が病気になり、子どもが親の面倒を見なくてはならない状況になった場合、親に対する肯定的、あるいは否定的感情が増幅される可能性がある。認知症などの認知機能障害を伴う場合はなおさらだ。「親の記憶と判断力が変容し、周囲との関係、子どもとの関係が変わっていきます。子どもはなすすべもなく、親の人格が変化していくのを見守るしかありません」と臨床心理士のブノワはもどかしい子どもの心境を代弁する。 親の健康状態への懸念を感じた瞬間から、あるいは親が老いて弱くなったことに気付いた瞬間から、不安感を抱く人がいる。「その人たちは、親がいなくなったらどうしようという子どもの頃の恐れや不安をずっと引きずっているのです。親はいつまでもいるという錯覚が、その感情をこれまで覆い隠してきました」と臨床心理士のブノワは言う。自分の父や母を特別視することで、そのことを考えないようにしてきたのだ。不安な気持ちに対処するには、いまの自分が親に何を求めているのかをあらためて考えてみよう。自分にとって親はどんな存在なのか。老いた親の姿に自分はなぜ失望し、受け入れられないのか。「両親を理想化して全能の存在と思う気持ちは、少しずつ手放しましょう。さもないと失望するばかりです」というのが臨床心理士のアドバイスだ。心の拠りどころを親以外に見つけられれば不安な気持ちも薄れるだろう。