いつか来るその日。親の老いという現実を受け入れるための、5つの心理学的ヒントとは?
死への恐怖を克服する。
同調効果も無視できない。親は子どもにとって人生の先輩であり、この先何が起きるかを教えてくれる存在だ。「子どもが老いることに不安を感じるのは、それがあまり楽しくなさそうだと感じるからです。老いた親を目の当たりにして、自分もこうなるのかと改めて思ってしまうのです」 父母がまだ元気でしっかりしており、家族や周囲との付き合いがうまくいっていたとしても、身体はだんだん衰えていく。同世代の友人や兄弟姉妹が亡くなっていく。「いつかは親の番だ、父や母の葬儀をしなくてはならない日が来る。それは明日かもしれないと思うと怖くなるのです」と臨床心理士のブノワは子どもの心理を分析する。そして親が亡くなれば、次はもう待ったなしで自分たちの番だ。「こうした思考パターンに陥りがちです。心の準備ができない人もいます。自らの死は考えたくないものです」。もしも不安にさいなまれて、あまりにも苦しい時はセラピストに相談するのもいいだろう。悩みが大きくなりすぎたら、メンタルヘルスの専門家のサポートが必要かもしれない。
罪悪感を持たない。
「肉親の世話をしている人のほとんどが罪悪感を持っています。何も悪いことはしていないのに」と言うのは医師で『Ma famille, mon job et moi, Les conseils d'un médecin à ceux qui prennent soin d'un proche(原題訳:家族、仕事と私、肉親を世話している人への医師からのアドバイス)』(Robert Laffont刊)の著者であるエレーヌ・ロシノ博士だ。そこには人の目が気になる心理が働く。親の老いを日々実感し、親が老人ホームに入ったりすると後ろめたい気持ちが湧きあがる。"親御さんと残された時間を大切に過ごしてね"なんて言われると、善意からの言葉だとわかっていても、罪悪感が増幅される。「親の面倒をちゃんと見てあげていない、残された時間を大切にしていないと感じてしまうのです。でも自分を責めても意味がありません。そんな気持ちは捨てて、親の世話と自分のことに専念しましょう」 まず罪悪感があることを自覚し、なぜそう感じるのか自問してみよう。自分の思考パターンがわかれば、対処の仕方もわかってくるはずだ。罪悪感を感じる理由は人によって異なり、いまの状況に起因している場合もあれば過去に根差していることもある。