トランプ氏復帰、世界中が注視 ウクライナへの軍事支援に変化も 中国「不確実性増す」
トランプ氏は「台湾は(米国に)防衛費を支払うべきだ」と主張し、域内総生産(GDP)比10%の防衛費支出を台湾に要求。これは歳出の8割超にあたる非現実的な数字だ。
さらに台湾が「半導体ビジネスを米国から奪った」とし、台湾製半導体への高関税も示唆した。世界的な供給網の中核として、中国による台湾侵攻を抑止する役割への期待から「シリコンの盾」と呼ばれる台湾の半導体産業に、トランプ氏の存在は大きな影を落とす。
ただトランプ氏に対しては悲観論だけではない。当局系シンクタンクの安全保障研究者は、大規模な兵器購入を台湾に求める同氏の勝利で「(最新鋭ステルス戦闘機の)F35などの高度な兵器を買うチャンスでもある」と指摘する。
また与党、民主進歩党系の政治研究者も「民進党は前回の米大統領選で、台湾との関係が良好だったトランプ氏の再選を望んでおり、バイデン氏の当選に焦りもあった。今回はどちらでも構わない」と話す。
一方、中国に融和的な最大野党の中国国民党は、米中間の緊張を高める可能性が大きいとみられるトランプ氏をより警戒する。「米国が中国に対抗するためのコマとして台湾を利用する」(国民党系の政治学者)との懸念を持つためだ。
■対イラン政策、一変の公算
パレスチナ自治区ガザやレバノンで戦闘を続けるイスラエルと、その宿敵イランに米国がどう対処するのか注目されるだけに、中東諸国は強い関心を持って米大統領選の行方を見つめた。
イスラエルで10月末に公表された世論調査結果で、次期米大統領はトランプ氏が好ましいとの回答が全体の66%を占め、ハリス氏との回答は17%だった。
それも当然の結果といえる。2017年から4年間の大統領任期中、トランプ氏はそれまでの米外交政策を変更してエルサレムをイスラエルの首都と認定するなど、同国寄りの政策を貫いた。特に戦闘が続く現在では、激しい攻撃で高まる国際的批判をかわす上でも最大の後ろ盾になるとの期待が大きい。イスラエルのネタニヤフ首相は6日、トランプ氏が勝利したことを受け、「歴史的に最も偉大な(大統領への)復帰だ。米国の新たな始まりとなる」と祝意を示した。