トランプ氏復帰、世界中が注視 ウクライナへの軍事支援に変化も 中国「不確実性増す」
■中国、関税引き上げ警戒
米大統領選で共和党のトランプ前大統領、民主党のハリス副大統領のどちらが勝利しても、中国では米国の対中圧力は緩和されないとの見方が支配的だった。
浙江外国語学院米国研究センター主任の王冲氏は「誰が大統領になろうとも中米関係で小春日和が実現するのは難しく、劇的な好転を実現するのはさらに難しい」との見解を選挙前に中国メディアに寄せた。
王氏は、バイデン大統領の対中路線を継続すると見込まれたハリス氏に対し、トランプ氏の路線では「不確実性と予見不可能性が増す」と警戒する。
中国側は、トランプ氏が大統領1期目で見せた「不確実性」に神経をとがらせる。トランプ氏は既に中国製品に60%の関税を課す方針を表明しており、実現すれば、景気低迷下にある中国経済には逆風だ。中国が「核心的利益」と位置付ける台湾問題でも、トランプ氏は中国が台湾に侵攻すれば「150~200%」の関税を課すと発言している。
一方で、中国は米政権の圧力継続を見越し、ここ1年ほどは米国を念頭に置いた外交を展開してきた。
まずは米国の同盟国などの切り崩しだ。日米豪印の枠組み「クアッド」の一角をなすインド、米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」とクアッド双方に入るオーストラリアとは、それぞれ悪化していた関係の改善に動いた。
次にグローバルサウス(南半球を中心とする新興・途上国)の取り込みにも力を入れ、中国やロシアなど主要新興国でつくる「BRICs」の枠組み拡大などを進めた。日中外交筋は「中国はこの1年間の取り組みを通じ、誰が米大統領になっても対応可能だと自信を持っているのではないか」と指摘する。
■台湾、有事の防衛で懸念残る
台湾当局は、米大統領選の結果が台湾海峡の平和と安定に影響を与えるとみて注視している。「米国の台湾支持は超党派の共通認識」(米当局者)とはいえ、バイデン米大統領が繰り返し台湾防衛を明言してきたのに対して共和党のトランプ候補の姿勢は曖昧さが増しており、台湾側には懸念も残る。