20周年を迎えた『3.1 フィリップ リム』。フィリップ・リムが改めて心に刻む「服はすべての人のため」
節目の20年。“これから”を考えた時の決意
20年のひとつの節目を迎えて、これから5年先、10年先の夢があるか?と聞いてみると、「夢は見ない」ときっぱり。目の前にあるもので自分が気に入ったら行うし、嫌いなものなら行わない。そしてファッションが嫌になったら辞めると言い切る。本当ですか?と真偽を問うと、 「はい、辞めます。嫌になったら終わりです。人生で最悪なことは、自分の心に嘘をついて行き詰まってしまうこと。僕は行き詰まりたくないから。僕はプラクティカルな人間です。服に関してもプラクティカルです。だから服を作るなら、人が着る服を作る。見せるためだけの服は作りません。私の人生も同じです。終わったと決めたら、それで終わりです」 それでは自身のブランドの5年後、10年後の将来は考えないのだろうか? 「先のことは考えられません。ブランドというのは僕ひとりではコントロールできないから。ブランドは、それ自体が生命力を持つべきです。正直に言うと、ブランドがファッション以外のものになってもそれは運命づけられていると思います。僕にとっての僕のブランドは、服作りに対して誠実であり続け、すべての人のために服を作り続けることです。僕が服のブランドを立ち上げたのは、自分や周りの人たちや友人たちのために服を作りたかったからです。そして今でもそれは変わっていません。それが僕に与えられた使命です。その使命を失わなければ、ブランドは続いていくと思います」 フィリップ・リム 1973年、タイ生まれ。移住したカリフォルニアで縫製工場の縫い子として家計を支える母親に「ファッションに興味がある」とは言えず、大学での学科を内緒でビジネスから家政学科に変更。デザインと流通を学んだのち、デザイナーのアシスタントなどを得てロサンジェルス拠点のストリート・ファッションのブランド、「ディベロップメント」のデザイナーとして活動。2005年にNYファッションウィークで自身のブランド「3.1 Phillip Lim」をデビューさせた BY TERUYO MORI