暴力だけじゃない。子どもへの虐待4つの類型と、その見分け方
家庭内のDVや性的虐待は、子どもの心に深い傷を残す
DVの目撃は、子どものトラウマの原因となりうる出来事です。子どものいる家庭で起こるDV の多くは、父親が母親に暴力をふるうというかたちで表面化します(※女性から男性へのDVもあります)。 DVの本質は「加害者が絶対的な権力をもち被害者を支配する」ということです。実際のDVのかたちは、威嚇する、強制・脅迫する、精神的及び経済的暴力をふるう、男性の特権を振りかざす、などさまざまです。 目の前で暴行を見ていなかったとしても、子どもは物音や声、母親(被害者)の顔が腫れているなどといったことから不穏な空気を感じ取り、おびえています。隠しているつもりの大人のふるまいから、「口外してはならないこと」という思いを強めていることもあります。 また、子どもに対する性的な虐待は、暴力や脅しをともなわなくても、トラウマになりやすい出来事です。女児に限らず、男児が被害に遭うこともあります。 児童相談所に寄せられる子ども虐待に関する相談のうち、性的虐待を主とするものは年間2451件です(令和4年度)。しかし、別の理由で保護された子どもが、性的虐待を受けていたと判明することは少なくありません。たとえば、DVのある家庭では、配偶者への性的暴行と子どもへの性的虐待がともにみられることがよくあります。 ネグレクトされていた子どもが、年長のきょうだいから性的な虐待を受けていたとわかることもあります。この場合、家庭内の性被害であっても加害者が「養育者」にあたらないため、公的なデータとしては「性的虐待」に含まれません。子ども自身はなにが起きたのか理解できないことも、子どもに対する性的虐待が表面化しにくい理由のひとつとなっています。 しかし、加害者のおこなう行為を性的なものとは認識できない幼い子どもでも、違和感は覚えています。そして「安全な関係」と「危険な関係」の違い、「親密さ」や「やさしさ」の適切な表現方法などがわからなくなります。 後年メンタルな問題で医療機関などにかかり始め、そこで子どもの頃の体験が明かされることもあります。そして、「あれは性的な行為だった」と気づいたときに深く傷つき、問題行動が激しくなることもあるのです。つまり、統計的な数字として示されている以上に、表面化しない性的虐待は起きていると考えられるのです。 〈災害や大切な人との死別、子ども同士や先生からのいじめ……トラウマをもつ子どもをさらに打ちのめす出来事〉へ続く
白川 美也子(精神科医・臨床心理士)