難病は“時間”を稼ぐことが大事。臍帯血移植を受ける白血病患者の決意
実績のある骨髄移植、近年増加する臍帯血移植
先生によると、臍帯血移植は骨髄移植より新しい治療ではあるものの、治療成績は近年では骨髄移植に迫っているそうです。 臍帯血バンクでドナーが見つかる確率も以前より上がっていて、今では97%ほどだといいます(確率は私の治療当時のもの。以下同)。 また、移植の成功を意味する生着率については、以前は骨髄移植が97%で臍帯血移植は85%とかなりの差がありましたが、今では臍帯血移植の治療技術の向上によって差が縮まってきています。 生着とは、移植した造血幹細胞から新たに血液が造り出されるようになることを指します。 こうした状況を背景に、最近は臍帯血移植の実施件数が増加しており、骨髄移植の実施件数を上回っているようです。 私は悪性リンパ腫の治療時に、移植も治療の選択肢としてあったため、骨髄バンクの検索をしていました。しかしそのときはマッチするドナーさんが見つからなかったのです。 そうした経緯があって、骨髄移植ではなく臍帯血移植を受ける方向で準備を進めていくことになりました。
1年でも2年でも時間を稼ぐことが大切
私のタイプの白血病の場合、移植の前処置の抗がん剤治療だけで白血病細胞を完全に根絶することは難しく、残ってしまった白血病細胞は、移植した臍帯血の免疫反応により駆逐する必要があります。 しかし、移植した臍帯血の免疫反応でも白血病細胞を根絶できなかった場合、再発してしまう可能性が高くなります。 それでも、移植を行なって、再発までの時間を1年でも2年でも稼ぐことで、分子標的薬などの新しい治療法の選択肢も増えてくる、と先生は言います。 例えば、当時メディアで話題となっていた免疫チェックポイント阻害剤のオプジーボについても、いずれ急性骨髄性白血病にも使えるようになる可能性があるとのことでした。 免疫チェックポイント阻害剤とは、がん細胞が免疫細胞の攻撃を逃れる仕組みを解除する薬のことです。 また、染色体異常のある白血病に対応する薬なども開発されているようです。 このように新しい治療法が日々開発されているので、1年でも長く生きれば、それだけ新しい治療薬が使えるようになって、治せる可能性が増えてきます。 だからこそ、まずは抗がん剤と移植で1年でも2年でも時間を稼ぐことが大切なのだというお話でした。 まだまだ人間の体には分からないことが多く、医学はいまでも発展途上で、だからこそ、これからも新たな治療法が開発される余地が大きいのでしょう。 一連の話を聞いて、自分を含め、治療の難しい病気の患者は、治療法の研究の最前線に立っているのだという思いを強くしました。