正社員の採用予定、3年ぶりに低下 「賃上げ」「原材料高」などが背景に
-2024年度の雇用動向に関する企業の意識調査-
2023年の平均有効求人倍率は、社会・経済活動が新型コロナ禍から回復したことにともない、前年(1.28倍)から0.03ポイント増の1.31倍と2年連続で上昇した。原材料価格の高騰などの影響もありコロナ前(2019年、1.60倍)に比べると十分に回復している状態とはいえないが、大きな落ち込みもなく推移している。 他方で、帝国データバンクが実施した調査では、2024年2月における人手不足企業の割合は「正社員」が18カ月連続で5割、非正社員は3割と、いずれも高水準で推移している。物価高騰と人手不足の状況がさらに長期化すれば、企業は厳しい判断を迫られることになろう。 そこで、帝国データバンクは、2024年度の雇用動向(採用)に関する企業の意識について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2024年2月調査とともに行った。
正社員の採用予定がある企業は61.5%。3年連続で6割を超えるも3年ぶりに前年を下回る
2024年度(2024年4月~2025年3月入社)の正社員の採用状況について、『採用予定がある』(「増加する」「変わらない」「減少する」の合計)と考えている企業は前回調査(2023年2月実施)から1.5ポイント減の61.5%となった。 3年連続で6割を超えたものの、3年ぶりに前年を下回った。また、採用予定がある企業の内訳は、採用人数が「増加する」企業が同2.0ポイント減の23.7%だった一方、「減少する」企業は同1.5ポイント増の8.6%となり、雇用動向は前年度までの勢いがやや鈍化した。 『採用予定がある』企業からは、「運転職の平均年齢が上昇しているため、定員確保に苦慮している新卒・中途ともに、女性ドライバーの雇用や定年退職者の継続雇用に力を注いでいる」(運輸・倉庫)といった声が聞かれた。 他方、『採用予定はない』企業からは、「社員募集をしても応募がなく、中小企業の雇用は難しくなっている」(飲食料品卸売)といった声が複数あがった。
正社員『採用予定がある』、「旅館・ホテル」が8割でトップ
業種別に正社員の『採用予定がある』割合をみると、コロナの落ち着きによる人流の増加やインバウンドの好調で人手不足感が高まる「旅館・ホテル」が8割にのぼった。 「2024年問題」が懸念される「医療・福祉・保健衛生」(79.2%)や「人材派遣・紹介」(78.0%)も8割に迫り、ITエンジニア不足が顕著な「情報サービス」(73.3%)も7割台となった。また、「人材派遣・紹介」では採用が「増加する」企業は4割を超えていた。