昔の面影がなくなった大阪「黒門市場」…インバウンド価格で“儲け主義”に走った先に訪れる未来
昔はこんな商店街ではなかった
そもそも黒門市場は、天下の台所と呼ばれた大阪で、新鮮な魚や野菜が揃うから、買い物客に親しまれてきた市場だ。しかし、バブル崩壊し、勢いを失ってしまった。 だが、インバウンド需要が2011年頃から増え始め、黒門市場の来街者はコロナ前の2019年には1日あたり約3万人と2.3倍に増えた。商店街には、外国語(中国語、韓国語)が飛び交い、本場の神髄を極めた「ほんまもん」の食べ歩きが訪日外国人観光客の観光スタイルとして定着し話題になった。 それを千載一遇のチャンスとばかり、その訪日外国人観光客のニーズに合致した商品を揃え、儲け優先主義に徹した店舗が増えてきたのである。しかし、そうやって活況を呈していたところにコロナという不測の事態が発生した。コロナによる緊急事態宣言ですべてが止まってしまい、新規参入店が撤収し空き店舗が増えた。
「なにわの台所」の未来は?
現在は、コロナが収束し、行動制限もなくなり、人流も復活し通常の賑わいに戻ってきた。訪日外国人観光客が、また黒門市場に流れ込み、連日込み合っており、高級食材を提供する店はまた大繁盛である。 その結果、品揃えや価格設定に偏りが出て、また地元客が来街しにくいと将来を心配する店主もいる。コロナ禍の3年間で多くの店が廃業し、その空き店舗に外部からの新規出店が相次いでいるが、その新規店は組合に入らないから実態が不明で、商店街としての統率も難しいとのことだ。 黒門市場は家賃など固定費が高く損益分岐点の高い経営を強いられているから仕方ない点もあるが、大阪を代表する「なにわの台所」だけに、将来のビジョンを描きながら、どう課題を解決するかは注目される。
訪日外国人観光客による光と影
インバウンド効果により経済が活性化している反面、一方でオーバーツーリズムの問題で地域環境に悪影響を与えており地域住民の苦情に行政が頭を痛めている実態もある。楽しそうに旅行をエンジョイするのはいいが、ルール無視、ゴミを散乱させたりとやりたい放題の外国人に地域住民の怒りは収まらないようだ。 事業活動面では金儲け主義に走り今まで築いた良き伝統と文化の継承を後回しにする老舗店や商店街も存在する。基本を徹底し変化に対応する経営をしていかねば、経営の継続は難しいことを認識しないといけないだろう。 <TEXT/中村清志> 【中村清志】 飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan
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