「非常に寒さを感じにくい服」を実現させる、ワークマンの脅威の新素材「Xシェルター」の全貌
ワークウエア で培った高機能と低価格を武器に、日本のアパレル業界で一大勢力となったワークマンが、2024年秋冬にまた新たな革命を起こしそうだ。 その武器となるのが、ワークマンが独自開発した新素材「Xシェルター」である。これまで、開いた針穴を自己修復する「リペアテック」や、圧倒的な耐摩耗性を誇る「オニテックス」など、さまざまな新素材を世に送りだしてきたワークマンだが、「Xシェルター」はこれまでの素材とは一線を画す、驚異的な機能を有している。それは「外部環境を無効化する断熱ウエア」という機能である。 今回はアパレル業界の常識を覆す可能性を持つ「Xシェルター」の開発にまつわるお話を、株式会社 ワークマン製品開発第1部チーフバイヤーの川田真之輔さんに、ワークマン公式アンバサダーである山田耕史がお聞きした。
日本赤十字看護大学附属害救護研究所が認めた「暖かくて軽くて動きやすい服」
山田耕史(以下、山田): 「Xシェルター」の企画はどういったところから始まったのですか? 川田真之輔(以下、川田): きっかけとなったのは、2023年にワークマンが設立した「快適ワーク研究所」での、日本赤十字看護大学附属災害救護研究所(以下、赤十字)の災害救援の専門家との連携にあります。 一般的に、災害や避難生活では、防寒性と透湿性を兼ね備えたウェアが必要になります。災害のときに雨や雪、汗で服がぬれてしまうと、低体温症のリスクが非常に高まるそうなんです。 これまで、ダウンジャケットをはじめ数多くの防寒アウターを開発してきましたが、実は防寒性と透湿性を両立させることは難しく、そのニーズを満たす素材がありませんでした。そこで生まれたのが「断熱」というアイディアでした。つまり、「寒さを感じにくい服」ということです。 山田: 「断熱」というワードは建築などの分野では聞きますが、衣類に関しては聞いたことがありませんね。 川田: 宇宙服では断熱素材を使用することがあるそうです。 人間には、衣服内の温度が30度から33度、湿度が50%くらいがもっと最も快適と感じる「快適温度」というものがあるのですが、「Xシェルター」は服の表地と裏地の間に特殊断熱シートと吸光発熱綿を組み合わせた素材を挟み込んでいます。 断熱シートは中にたくさんの気泡を含んでおり、それが熱を遮断します。断熱シートにエネルギー蓄積効果の高い発熱綿を組み合わせることで、外部環境からの寒さの侵入と内部からの熱の拡散を防ぎ、外気温に関係なく衣服内に「快適温度」をつくりだすのです。 これにより、暑さや寒さのストレスを感じにくい、外気の影響も感じにくい、という状態を実現させているのです。 さらに、「Xシェルター」は軽量でコンパクト、そして抗菌防臭という機能も兼ね揃えています。災害時は洗濯できないことが多いでしょうから、抗菌防臭は非常に役に立つのではないかと思います。 山田: 僕は神戸出身で、中学生のときに阪神淡路大震災を経験したので、災害時に水を確保することの難しさは理解できます。 川田: 大規模な災害が発生したときは、着の身着のままで家の外に出てしまい、防災バッグを持って避難することができなかった、というケースが少なくないそうです。 ワークマン製品なら普段着として気軽に買える価格ですので、災害時に役立つようなスペックを備えていれば、「普段着ている服が命を救ってくれる」という可能性もあります。 実は、今年の年明けに発生した能登半島地震のときに、赤十字さんに数多くのワークマンの製品を使ってもらったのですが、そのときに評価していただいたのが「Xシェルター」なんです。その理由は、「暖かくて、軽くて、動きやすい」から。避難所などでも多くの方に着ていただいたらしく、我々も少しはお役に立てたかなと思っています。 そのときに使っていただいた「Xシェルター」のサンプル品に対し、実際に着用してみてどうだったかというご意見をいただき、それを2024年秋冬製品の開発に反映させています。