「こ、怖かったです…」箱根駅伝“史上最激戦”4つ巴のシード権争い…トラブル連発でも東洋大「20年連続シード権獲得」“涙のアンカー”の本音
「ありがとうございます……はい、こ、怖かったです」 近づきながら「良くやった」と声をかけてきた指揮官に気づき、両手を差し出した東洋大学・薄根大河(2年)の声は震え、目にはうっすら涙が浮かんでいた。 【写真】秒差で4人はエグい…9位で号泣の東洋大アンカーを抱きしめる4年生エースの感動ショット…史上最熱戦のシード争い“4つ巴”の10区&「20年連続シード獲得」東洋大の箱根路も写真で振り返る 酒井俊幸監督は、薄根の肩をポンポンと叩くと「泣くなよ、シードとったんだから」と柔らかい笑みを浮かべた。そして「次は怖くならないように、もっと余裕を持ってスパートかけられるようにしような」と前向きな言葉をかける。 2人のやり取りに、箱根駅伝という舞台の大きさ、そしてそこでシード権を獲り続けるチームが背負うものの重さが滲んでいた。 第101回箱根駅伝。東洋大学は9位に入り、現在進行形では最長となる20年連続のシード権を獲得した。だが、その偉業は薄氷を踏む、ギリギリのレースの末に掴んだものだった。
箱根の「超名門」東洋大に起こった“異変”
1月2日早朝、駅伝ファンの間に激震が走った。東洋大学が当日のエントリー変更で往路5名のうち4名を交替。特に、1区・石田洸介(4年)と2区・梅崎蓮(4年)という二枚看板が外れたことで、上位進出はおろか、シード権さえ危ういのではないかとささやかれた。 事実、往路の戸塚中継所で取材をしていると、通過順位は19位。記者仲間からも「厳しいね」という声が漏れていた。3区を走る迎暖人(1年)のサポートに回っていた石田の姿も見えたので「痛めた足、大丈夫?」と声をかけると、「はい」という声は返ってきたものの、その表情は固かった。 ゴールの大手町で酒井監督が内情を語る。 「いやぁ、参りましたよ。エース(梅崎)を使えないんですもん。2区が予定通りに行かないと全ての計画が崩れてしまいますから。シード落ちも頭をよぎりました」 梅崎を外す決断はレース前日の1月1日。直前に発症したアキレス腱痛が原因だったというが、それ以前から不調のシグナルを感じていたという。 「夏以降、走りのテンポがずっと良くなかったというか、調子が上がって来なかったんです。12月21日の法政大学記録会に出せば調整にもなるので、その後、上がってくるかなとも思ったんですが、最後まで感覚的にも良くない中で突発的にアキレス腱に痛みが出てしまいました」 自ら走れないと申告してきたキャプテン。酒井監督は「もう1日だけ様子をみよう」という判断をしたが、やはり改善できず。この直前の状況を4区を走った岸本遼太郎(3年)も「うわ、梅崎さんも走れないんだと。嫌な予感が頭をよぎりました」と振り返る。 2年連続で2区を走る予定だった大黒柱を欠くことで、区間配置も大きな変更を余儀なくされた。オーダーを組むのもまさに「突貫工事」(酒井監督)だったという。 ただし、今季のトラックシーズンで見事に復活した石田と、U20世界選手権にも出場している期待の1年生・松井海斗に関しては、12月10日のエントリーの段階から「箱根で走れるかどうかわからない」状態だったという。 「石田はアキレス腱を痛めていましたし、松井は首のオペ(手術)をしていましたから。もちろん16名中2名、そういった状態の選手を入れるリスクはありました。でも、石田や松井は天性の能力を持っていて、感覚がとても繊細。何かきっかけをつかむと一気に状態を上げてくる可能性がある選手です。だからその可能性にかけてみました」 最終的には石田は12月に入ってから再びアキレス腱を痛め、松井は最後まで5区で走る可能性もあったが「接戦が予想され、気温も高い中でギリギリまで絞り出して走らせるリスクがある」と判断して外した。しかも、7区にエントリーされていた濱中尊もアクシデントで起用できなかった。
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