驚異的なスピードで目標金額を達成! 7億円を超えた国立科学博物館のクラウドファンディングはなぜ成功したのか 専門家に理由を聞いてみた
過去最大の挑戦―。そう銘打って、国立科学博物館(東京)が8月7日、クラウドファンディングをスタートした。目的は、標本や資料を集めて保存する費用を工面するためで、目標金額は1億円に設定した。篠田謙一館長自ら記者会見に臨み、世間に広く支援を訴えた一大プロジェクトは、ふたを開けてみれば開始からわずか9時間20分で目標を達成し、現在の寄付額は7億円を超えた。 驚異的な早さで目標金額に到達して世間を驚かせた今回のクラウドファンディング。科博の現状を整理するとともに、成功した理由や今後の課題を専門家に取材した。(共同通信・岩村賢人、村川実由紀) ▽収蔵庫には貴重な標本がたくさん 通路の両側に大きな角のある剝製がずらりと並ぶ。上野動物園にいたパンダや立ち上がった大きなクマの姿もある。ここは茨城県つくば市にある国立科学博物館のバックヤード(収蔵庫)だ。 科博は1877年に創立された日本で最も歴史のある博物館の一つで、500万点以上の標本を収蔵しているが、上野の本館で来館者が見られるのはごく一部。大半の標本や資料はバックヤードで保管していて、通常は非公開となっている。
なかなか目にする機会はないが、貴重な標本は多い。例えば、「タイプ標本」と呼ばれるもの。ある生物を「新種」と判断する根拠となった標本で、世界に一つしかない。科博では絶滅危惧種のイリオモテヤマネコなど、複数の動物のタイプ標本を保管している。 他にも、ヒョウとライオンの異種交配で生まれた「レオポン」の剝製、2008年に死んだ上野動物園のジャイアントパンダ「リンリン」の剝製など重要な標本は数え切れない。動物の剝製だけでなく、微生物や昔の人骨、飛行機、鉄道もコレクションに含まれている。 研究に使ってもらうため、地方自治体の財政悪化、会社の代替わりや相続などさまざまな理由で各地から標本が持ち込まれ、毎年数万点が新たに登録されている。 保管の意義について、動物研究部の川田伸一郎研究主幹は「博物館にはその時々で地球上の一部を保存していく役割があると思っている。機会があれば集めて残す。100年、1000年かけて次世代に自然の素晴らしさを伝えていければ良い」と話す。