驚異的なスピードで目標金額を達成! 7億円を超えた国立科学博物館のクラウドファンディングはなぜ成功したのか 専門家に理由を聞いてみた
では、他の博物館で同じように多額の寄付を集められるのか。渡辺さんによると、科博のように日本全国を「受益者」と想定できる博物館はそれほど多くない。「この分野の標本や展示ならどこにも負けない」という強みがあれば全国から人を集められる可能性があるが、多くの博物館は「立地している地域の博物館」という枠から抜け出すのがなかなか難しく、潜在的な受益者は少なくなってしまう。 それでも、渡辺さんは「トップの関与と資金集めに対する投資、アイデアの工夫を組み合わせれば、相応の額を集められる博物館はかなりあるはず」と推測する。 科博も今回のクラウドファンディングを、全国の博物館を巻き込んだ取り組みに発展させていくつもりだ。篠田館長は8月10日に配信した動画で「地球の宝を守るというミッションは全ての博物館で行われている。みんなで協同してこそミッションをさらに先に進められる」と述べ、その後、寄付の使い道として、他の博物館が標本や資料を入手して整理する作業を支援したり、科博が収蔵するコレクションを全国の博物館で展示する「巡回展」を開催したりする方針を明らかにした。
▽課題は、長期的な支援の獲得 今回のクラウドファンディングは成功した。次の目標は、単発の目標達成で終わらせず、長期的な支援を集めていけるかどうかだ。 渡辺さんによると、寄付の形は大きく「Charity(チャリティー)」と「Philanthropy(フィランソロピー)」の二つに分けて整理できる。チャリティーは「災害時など緊急時の人道的な支援」で、フィランソロピーは「社会問題の解決や、より良い社会への戦略的、長期的な投資」という意味で使われる。 今回の科博のクラウドファンディングは、高騰する光熱費や資材の費用を賄うという意味では緊急時の支援を求める「チャリティー」に見える。 一方で、篠田館長は8月7日の記者会見で「資金援助だけでなく、当館の取り組みを応援してくれる新たな仲間との出会いを作る機会だと強く思っている」と述べ、支援してくれる人と継続的につながっていく「フィランソロピー」の必要性にも目を向けていた。 ▽日本の寄付は「チャリティー」中心