年間最大200人が犠牲に、凶暴なナイルワニだが卵を口の中で優しく転がし孵化させる一面も
サハラ以南のアフリカやナイル川流域、マダガスカルに分布 古代エジプトでは神の化身
ナイルワニは凶暴な人喰いワニとして知られている。実際、その生息地のほとんどが人間の生活域と近接しているため、人間が襲われるケースは少なくない。ナイルワニは無差別に何でも食べる習性があるので、川岸で洗濯をしている人は、ナイルワニにとっては野生の動物と同じように美味しそうな獲物に見えるのだ。正確な数は不明だが、年間最大200人がナイルワニに襲われて命を落としていると考えられている。 【動画】ワニと遊びたくなったカバの子、結末は… 原始的で獰猛なこのワニは、平均体長は5メートル、平均体重は220キロ程度だが、最も大きい個体は体長6メートルにもなり、体重は700キロを超える。サハラ以南のアフリカやナイル川流域、マダガスカルに分布し、川や淡水の湿地帯、マングローブの沼地などに生息している。 ナイルワニは主に魚を食べるが、シマウマや小型のカバ、ヤマアラシ、鳥、ほかのワニなど、目の前を横切るものは何でも襲う。死肉も食べ、1度の食事で自分の体重の半分に相当する量を食べる。 この恐ろしいワニには珍しい性質がある。それは親ワニが子ワニの世話をよくすることだ。多くの爬虫類は産卵すると卵を放置するのに対し、ナイルワニのメスとオスは孵化するまで巣を熱心に守るのである。また卵を口の中に入れて優しく転がし、殻から小ワニが孵化するのを促すこともある。 狩猟によって1940年代から1960年代にかけては絶滅の危機にあったが、地域と国際的な保護団体の活動により、ほとんどの生息地において個体数の回復に成功している。しかし、環境汚染や狩猟、生息地の破壊により個体数が激減している地域もある。
ナショナル ジオグラフィック 日本版編集部