「成長物語がしんどい時もある」『後宮の烏』原作者・白川紺子が新作で描く、不完全な自分を受け止める方法【インタビュー】
累計130万部超えの人気作『後宮の烏』がアニメ化したことでも話題の白川紺子さん。そんな白川さんの最新作であり、初の単行本となる『龍女の嫁入り 張家楼怪異譚』が11月26日に発売された。
ダ・ヴィンチWebでは、発売を記念して白川さんへインタビューを敢行。作品に込めた思いや、作品が生まれるまでを伺った。 ――『龍女の嫁入り』というタイトルから、恋愛ファンタジーの印象を抱きましたが、怪奇ミステリーの読み心地も強くて、大変わくわくさせられました。 白川紺子(以下、白川):いつか中華ホラーを書いてみたいと思っていました。もともと読み手としては、櫛木理宇さんや芦花公園さんのようなぞくぞくさせられるホラーやサスペンスが好きなんですよ。子どもの頃はオカルトブームだったので、幽霊やUFOの話に触れるのも好きでした。 でも書くのにはあんまり向いていないなという自覚があって、人間関係の描写に注力してしまう。ただ、結婚をテーマにすることが多いのは、恋愛小説を書こうというより、見知らぬ他者と出会って、互いを理解し、関係性を育んでいく過程を追うのが好きだから。 ――とにかく病弱な、豪商の末息子・琬圭が、命を救ってくれた道士から縁談をもちかけられ、龍王の血を引く道士の娘・小寧と結婚することになる……という設定はどこから生まれたのでしょう。 白川:中国の怪奇小説に、龍女が登場する物語がいくつかあったんです。親の決めた許婚(いいなずけ)とか、お見合いとか、本来ならまじわるはずのない二人の出会い、というのも好きで。最初は反発している二人の距離が徐々に近づいていく感じを書きたいんですよね。 生活のうえであたりまえだと思っていることが違い、なじみのないしきたりを覚えていかなきゃいけないのは、現代の結婚でも同じですが、異類婚姻譚のかたちをとることで、いっそう他者との歩み寄りを描きやすくなるなと思いました。 ――小寧の登場シーンからして、二人の生きてきた世界がまるで違うことが明らかですよね。 白川:彼女が雲に乗って嫁入りする場面は、最初に思い浮かびました。琬圭がおっとりした優男というのも決まっていたので、小寧はツンケンしていてはねっかえりな態度で、なかなかなじまない感じがいいなあ、と。でも書いていくうちに、意外と面倒見がよくて、なんでも助けてくれる子だなと思うようになりました(笑)。 ――幽鬼(死者の霊)が見えるどころか呼び寄せてしまう琬圭を助けてくれるし、追い払うのに雷を落とすのは人間界ではちょっと……と言われれば守る。「人間と結婚するなんて時代遅れ!」と文句を言いながら、わりと素直なのがかわいいです。 白川:人間の血が入っている小寧は、龍でも人でもない半端者のような扱いを受け、ずっと孤独を味わってきた。琬圭との結婚に乗り気なわけじゃないけど、妻という立場を失ったら小寧は他に行き場がないんですよね。自分に面倒がふりかかるのもいやだし致し方なく、というところもあったとは思うのですが。
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