「捜査当局がグズグズしているから新たな被害が…」”地面師詐欺”被害者救済のために奮闘する”大物ヤメ検弁護士”の「苦悩」
警察は頼りにならない
埒が明かないとみた大鶴は、警視庁本庁にも掛け合ったというが、これほどの大物ヤメ検が動いてなお、捜査当局は逡巡し、しばらくは捜査が進まなかった。こう言葉を継ぐ。 「そこで松田が釈放された翌週には、僕が松田から2回ヒアリングをし、物件の所有者のところや向こう側の司法書士からも話を聞いた。犯人グループにとっては、その司法書士のヒアリングがこたえたんだろうと思うけど、そうして独自にこちらで調べていくと、北田が自ら町田署に出頭したんです。ところが、そこでも警察は北田の弁解を聞いただけで、そのまま帰してしまったんです」 ここに登場する司法書士が、アパホテルの地面師詐欺でも逮捕された亀野裕之だ。大鶴はこうも言った。 「この過程で、津波社長や会社の社員の人たちは、まるで警察のように一生懸命調べてくれました。他の事件でも出てくる地面師の北田の人定をしたのも、警察ではなくわれわれです。連中の姓名や会社をネットで調べ、別の警察署に告訴が出ているとわかった。それを手繰り寄せていってね。告訴人の弁護士に僕が電話で頼み込んで3件くらい告訴状を取り寄せた。ただどの事件も告訴が不受理になっていて、警察はぜんぜん相手にしてくれない、と嘆いていました。そこに、くだんの司法書士も出てきたのだと思います。だから、事件の根っこは、そのあたり。彼らを早く捕まえ、刑務所にぶち込んでいたら、おそらく彼らが引き起こしている事件の被害は、現在の十分の一くらいで済んでいたと思います。それを長い間、グズグズしているから、津波社長のような新たな被害が出てしまうんです」 『首謀者が逮捕されても、「地面師詐欺」事件の全貌解明とはならず…犯行グループの“半分以上”が「お咎めなし」だった驚きの理由』へ続く
森 功(ジャーナリスト)