「捜査当局がグズグズしているから新たな被害が…」”地面師詐欺”被害者救済のために奮闘する”大物ヤメ検弁護士”の「苦悩」
Netflixドラマで話題に火が点き、もはや国民的関心事となっている「地面師」。あの人気番組「金スマ(金曜日のスマイルたちへ)」や「アンビリ(奇跡体験!アンビリバボー)」でも地面師特集が放映され、講談社文庫『地面師』の著者である森功氏がゲスト出演した。同書はすべて事実を書いたノンフィクションであり、ネトフリドラマの主要な参考文献となっている。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 不動産のプロですらコロッと騙されるのだから、私たち一般人が地面師に目をつけられたらひとたまりもない。そのリスクを回避するためには、フィクションであるドラマよりも、地面師の実際の手口が詳細に書かれた森氏のノンフィクションを読むほうが参考になるだろう。 地面師たちはどうやって不動産を騙し取るのか。森功著『地面師』より、抜粋してお届けしよう。 『地面師』連載第63回 『明らかな詐欺にも関わらず、“地面師”をわずか2時間で釈放…情報操作に乗せられた警察の「杜撰で荒唐無稽な」捜査』より続く
裏の裏を読んだ警察
焼身自殺まで考え、それを伝えた被害者津波幸次郎の相談相手が、顧問弁護士の大鶴基成(61)だった。その大鶴に会った。 「当時の手帳で確認すると、津波社長が僕のところに来たのは、2015年6月1日の月曜日でした。『警察がぜんぜん信用してくれない』という相談で、まさに切羽詰まった様子でした。これはいかんと思い、翌日に社長といっしょに町田署に出向いたんです。 で、刑事課長をはじめ5~6人の刑事さんと狭い部屋で会いました。僕が『小さな会社で5億円も騙し取られて大変なので、早く捜査をしてください』と願い出ると、驚いたことに課長は社長の前で、『誰が被害者か分かりませんからねっ』と妙な言い方をするのです。さすがにムッとしましたね」 元検事の大鶴は、1990年代に東京地検特捜部でゼネコン汚職や第一勧銀総会屋事件を手掛けてきた。05年に特捜部長に就任し、最高検検事時代には2010年の陸山会事件の捜査にも関わった。11年8月に退官し、弁護士に転身した。大物ヤメ検弁護士である。津波の会社の顧問弁護士として登場したその大鶴を前に、警察は極めて不遜な態度をとったというのだが、半面、当の大鶴自身は警察の真意を冷静に分析する。 「つまり警察は裏の裏を読んだんですね。不動産のプロが、なぜこんなにコロッと騙されるのか、変じゃない?ってところでしょうか。それに加え、取引現場には司法書士もいましたから、ひょっとしたらこれは、津波社長が松田たちと組んで、銀行から5億円を騙し取った共犯ではないか、と考えたみたいなんです」