「何事!?ってビックリしました」NEC佐野航大から溢れ出た“兄・海舟”への熱き想い。「俺があがいたところで…兄貴のプレーしている姿が好きなんです」【現地発】
「あの人は言葉や態度で見せないけれど、プレーで見せるところが凄い」
多機能プレーヤーで知られる佐野航大はMFプロッパーの長期離脱もあり、最近はセントラルMFとして定着した。 「今日は自分たちのプレスがしっかりハマって、相手も蹴るしかない状況だった。セカンドボールを拾って前につなげたりとか、キープしてビルドアップしたりすることができた。みんなのセカンドボールや球際への姿勢もすごく見せることができました。そういうことが内容や結果につながってきたと思います」 なかでも佐野のインターセプトが効いている。相手にトラップさせることなくパスをカットしたり、パスの出し手のコースを呼んで足を伸ばしてボールを奪ったり、佐野のインターセプトにはいくつかのバリエーションがある。 「あのへんは兄貴(佐野海舟/マインツ)の真似ですね。ずっと兄貴のプレーを見ていたので、パスコースをわざと空けてボールを取ったりすることが勝手に染みついている。コースを空けて取ることだったり。そういうことを真似してやってるつもりです」 兄の真似だけではなく、まるで欧州の選手のように足が伸びるようになったので、インターセプトが決まるようになったのでは? 「それもある。でも、日本でプレーしていたときのほうができましたね。ヨーロッパはパススピードが速く、シュートみたいな縦パスが入るので、そういうところが難しい。守備のところは自分でも楽しく成長できてます」 楽しく守備が成長できている!? 「そうですね。強く行くところが守備の課題だったので、それを克服してできるようになるとやっぱり楽しい。守備でも攻撃でももっと成長したいです」 期せずして佐野の口から「兄貴の真似」という言葉が出てきた。私自身、そろそろ彼に海舟のことを尋ねてみてもいい頃合いかなと思ってスタジアムに来ていた。それというのも最近、マインツでのプレーにまつわる記事が増えてきており、動揺することなく落ち着いて話ができるタイミングだと思ったからだ。この夏、兄の騒ぎでショックはなかったのか? 「落ち込むというより、『何事!?』ってビックリしました。しかし、俺があがいたところでどうにもならないし、キャンプもあったので『自分がやるべきことをやるべきだ』と、すぐに気持ちを切り替えました」 兄の試合は全試合、チェックしているという。 「やっぱり同じボランチとして学ぶところがいっぱいあります。特に守備のところで誰よりも危機を察知するところとか。あの人は言葉や態度で見せないけれど、プレーで見せるところが凄い。チームにフィットするにつれ『すげえな』と思って試合を見てます。兄貴がブンデスリーガでサッカーをやれている姿を見るだけで良いです。兄貴がサッカーできていることに、すごく喜びを感じてます。自分の試合以上に、兄貴のプレーしている姿が好きだし、毎試合見ています」 NECの公式SNSは夏キャンプ中、満開の笑顔でポーズを取る佐野の写真をポストし、ファンを安堵させた。今回、私の問いには「すぐに気持ちを切り替えた」と答えてくれた。しかし、それは簡単なことではなかったはず。佐野の言葉の端々に溢れ出る兄への熱い思いが、そのことを表していた。 取材・文●中田 徹
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