青森でイカ・サバ激減――日本の海の異変、ひたひたと迫る「魚種交替」と「温暖化」
海外産に100%移行した加工会社も
八戸には「いかの塩辛」や「しめ鯖」などの加工品を製造する工場が60あまり存在する。だが、八戸の老舗企業に尋ねると、役員の男性は「もう八戸のイカは使っていない」と打ち明けた。 「当社の加工品用では、イカは輸入の海外産に100%移行しています。アメリカ産のカナダマツイカとペルーのアメリカオオアカイカ。もう2年前からです。もちろん地元のイカを使いたい。けれど量が見込めないし、獲れても単価が高くなり、割に合わなくなってしまったのです」 こうした状況は1社に限らないと八戸水産加工業協同組合連合会の専務理事、川村雅敏さんは言う。 「イカでもサバでも予定した量でつくれないのであれば、輸入などの対応を考えるしかない。いくつかのメーカーは、加工品に野菜など別の素材を組み合わせたり、料理法を変えたりして新しい製品を生み出すことで、そのロスに対応しようとしています」 従来獲れていた量が確保できず、物流などにも影響を与えていると八戸市水産事務所の副所長、高舘強さんは言う。 「長年サバなどを運んでいた冷凍や冷蔵のトラックの会社が昨秋、北海道に拠点を移転してしまったんです。トラックは量を運ばないと稼ぎになりませんから。この数年、たまに呼ばれて運ぶという状態になっていた。ここではやっていけないとなったのでしょう」
また、市場の隣で長年やっていた定食屋も廃業してしまったという。魚が獲れないことで、船員はもちろん、周辺産業の人も減り、港での商売が成り立たなくなった可能性がある。 いったい、なぜこんな事態になったのか。
八戸沖を不漁にする三つの要因
長年、水産資源の変化について研究してきた水産研究・教育機構水産資源研究所(八戸庁舎)の木所英昭さんは、八戸の激減には三つの要因があると指摘する。 「一つ目は20年ほどの地球規模の周期的な変動による『魚種交替』。これは自然現象です。二つ目は人間の活動が原因で起きる『地球温暖化』。三つ目はそれらによる『局所的な影響』。これらが重なって、八戸での記録的な減少につながっていると考えられます」