全日本卓球でも注目。早田ひなや張本美和らに続く女子の"新星"
2000年生まれの早田、平野、伊藤の〝黄金世代〟に張本が入り込むという構図だった日本女子卓球に、新たな風を吹き込んだのが大藤沙月(同8位)だ。 五輪3大会連続メダリストの石川佳純らを輩出した大阪の名門・四天王寺高校出身の20歳で、すでに国際大会などでメダルを獲得している木原美悠(同30位)と同学年。21年のインターハイではダブルス(横井咲桜とのペア)と団体の2冠に輝いた。 152㎝と小柄ではあるものの、威力のある両ハンドドライブが武器で、バックハンドは中陣や後陣に下げられても振り切ることができる。本人も「バックを強く振る選手は今の女子ではまだ少ないと思うので、そこは自分の魅力だと思います」と語るように、攻撃に出た際のパワーは日本女子でトップレベルだ。 大藤は23年10月から指導を仰ぐ坂本竜介コーチの下、24年1月の全日本選手権で平野にストレート負けを喫したのを機に〝守から攻〟へとスタイルチェンジ。「五輪に出場する」ことを目標に掲げ、前へ出る卓球に取り組んだ。 それが功を奏し、24年4月時点で世界ランキング125位だったところから快進撃が始まった。WTTシリーズの下位選手が出場する「WTTフィーダーシリーズ」のシングルスで3度、ランクを上げて臨んだ「WTTコンテンダーシリーズ」でも優勝を飾るなど、シニアの舞台で実績を積んでいる。 そして本格ブレイクを印象づけたのが、昨年10月に行なわれた「WTTチャンピオンズ モンペリエ」。ケガの早田に代わって出場し、2回戦で平野との日本人対決を3-0のストレートで制すると、続く準々決勝でも伊藤に3-1で勝利して、その勢いのまま決勝まで勝ち進んだ。 張本との対決になった決勝ではラリー戦で互角以上の戦いを見せ、サービスや台上技術もさえた。一度はマッチカウント1-2とリードを許すも、そこから4-2でひっくり返し、同大会初出場で初優勝の快挙を達成した。 11月には自身初の世界トップ10入りを果たし、WTTファイナルズ福岡へも出場。世界ランキングも早田、張本に次ぐ8位まで急上昇して一躍注目選手となった。 大藤には、全日本選手権や世界卓球でも上位進出の期待がかかる。さらに、その先に続くロス五輪出場をかけた争いにも参戦していく可能性があるだろう。 パリ五輪を経て日本女子卓球界の勢力図争いは激しさを増し、ハイレベルになっている。早田、張本、平野、伊藤といった歴代の五輪出場メンバーに加えて大藤という新星も現れ、今年も大きく飛躍を遂げる選手が出てくるかもしれない。まずは全日本卓球での、選手たちの動向から目が離せない。 取材・文/井本佳孝 写真/アフロ