「さらばモデル年金」誰も知らない財政検証の進化
そして今年の財政検証では、この関連資料4がバージョンアップされたわけです。 そこでは、出生コーホート別、すなわち生まれた年次別の老齢年金の平均月額やその分布が初めて試算されました。 このグラフは、各年代の人たちが65歳になったときに、どれだけの年金を受け取れるかを試算したものです。たとえば、一番左。2024年度末に65歳で老齢年金を受給している人たちの男女計の平均月額は12.1万円、月額20万円以上は9.1%です。
一方、一番右。現在20歳の人たちが65歳になったときの年金は、過去30年のような経済の停滞が続く場合は2024年価格で13.6万円ですが、経済成長が順調に進む場合には22.5万円になり、この場合の月額20万円以上の人たちは64.8%と大幅に増えます。 さらに関連資料4には被保険者の構成割合の見通しという重要なデータもあります。これからは、自営業者などの国民年金1号、それに配偶者に扶養されている主に妻の入る国民年金3号の割合が低下して、厚生年金の被保険者である2号の割合が増えていきます。その変化の主な理由は、女性の厚生年金加入の増加によるものです。
ところが、モデル年金では女性はずっと専業主婦で3号のままです。モデル年金からは、今を生きる若い人たちが自分の将来を知ることができないわけです。 現実には、これからは、女性が厚生年金に加入している期間が長くなります。 たとえば、グラフの一番左。現在65歳の女性の厚生年金の被保険者期間は平均で17.2年だったのが、経済成長が順調に進みこれからも労働参加が進展すれば、一番右の現在20歳の女性が65歳になる頃には平均31.6年になることが見通されています。それに応じて現在65歳の女性の平均月額9.3万円は現在20歳の女性では19.8万円へと倍以上に増えます。
次の図をみてください。これはコーホート別(2024年度末の年齢別)に、65歳になったときに年金の平均月額が、男女それぞれ、どの程度の額になるのかを、2024年度年金額を100として見たものです(縦軸の目盛がケースによって異なるので注意)。 成長型経済移行・継続ケースでも過去30年投影ケースでも、男性の年金平均月額はモデル年金と同じように推移するのですが、女性の平均月額は、大きく伸びることが見込まれています。その理由は、男性の厚生年金被保険者期間は伸び代が少ないのに、女性はこれから厚生年金の被保険者期間が大きく伸びるからです。