「雨の日に長靴がなぜダメ?」50年前の規則に縛られた議員の服装、自由化したら…意外な評価に
2010年ごろのこと。その日は雨だった。埼玉県戸田市の議場に現れたある市議会議員の装いが、議員の間で話題になった。 「まさに天国から地獄」投票用紙に「!」と書いてさえいなければ…わずか1票差で当選が無効 納得いかない市議会議員の法廷闘争
「議場に長靴で入るのはいいのか?」 議会には昭和から続く、服装に関する規定がある。定められたのは1973年、約50年前だ。こう書かれている。 「議場に入る者は帽子、外とう、襟巻き、つえ、傘の類を許可なく着用、または携帯してはいけない」 「議場に入る者は、見苦しくない服装をしなければならない」 これまで、長靴以外でも議論がたびたびあった。チノパン、ショートソックス…その都度「その服装はいいのか」と声が上がり、そのたびに議会運営委員会で議題となっていた。 2017年にはクールビズも議論の対象になり、議会運営の申し合わせ事項にこんな項目が設けられた。「男性はネクタイをするか自由(=それ以外の期間はネクタイをしなければならない)」「シャツ、ブラウスはストライプは可だが柄物は不可」 数々の決まり事が議員の服装を縛っていた。しかし今、戸田市議会に足を運ぶと、ラフな装いの議員が目立つ。スーツばかりだったかつての風景から一変した。何があったのだろうか。(共同通信=大井みなみ)
▽取るに足らない問題に時間を割いていた かつての議会はスーツ姿ばかりの堅苦しい風景がおなじみだった。しかし、遠藤英樹議員はその必要性に疑問を感じていた。 「男女でルールが違い、今の時代に合っていないのではないか」 服装に関する意見が上がればいちいち議論が必要だったが、遠藤議員は「取るに足らない問題に時間を割いている」とも考えて、声を上げることにした。 2022年2月、所属している議会改革特別委員会に服装自由化を提案した。最近では、見た目の性と異なる服装を好む人もいる。前時代的な服装観にとらわれた規則では、いずれ支障が出る可能性があった。 良くも悪くも前例を重視する議会だが、「服装自由化」の提案はすんなり通った。委員会では大きな反対はなし。2023年3月議会から、試行を始めることになった。自由化は好評で、そのまま12月議会から規定を撤廃することを決めた。 ▽昭和の規定、なくしたらどうなった?