ナイキやアンダーカバーが注目するタトゥーアーティスト・TAPPEI:その歩みとデザイン哲学
体の上に暮らすキャラクターの秘密
ーカートゥーンのようなフレンドリーなキャラクターが、シンプルな線で描かれていますよね。 本格的にこのデザインになっていったのは東京に出てきてからです。大阪にいたころはクラシックなタトゥーを彫ったほうがいいのかなと思っていたんですが、東京では自分のオリジナルのデザインを面白がってくれる方が多かった。 ーかわいらしく毒々しくもあるキャラクターが登場する世界観はどこから生まれたのでしょうか。 キース・へリングのグラフィティや『ザ・シンプソンズ』のような海外のアニメに影響されているところもありますが、子どものころに人形やぬいぐるみで遊んでいたことが一番大きいですね。 怪獣の人形を戦わせるというような男の子らしい遊びには興味がなくて、『トイ・ストーリー』みたいにいろいろなキャラクターが暮らしている世界をつくるのが好きだった。そこが原点のような気がします。
ーたしかに、キャラクターが体の上に暮らしているようにも見えますね。なかでも「天使」は代表的なモチーフだと思います。名前はあるのでしょうか? あえてつけていません。「天使のキャラ」と呼んでいます。
「天使」はタトゥーのメジャーなモチーフで、お客さんからのオーダーも多かったのでつくりました。最初はスマイルマークのような顔だったのですが、だんだんと現在の姿に近づいていって、僕の看板キャラになっています。
ーこうしたキャラクターやメッセージを体の上に彫っていくスタイルで、独特なストーリー性も感じます。タトゥーならではの創意工夫はありますか。 タトゥーは体のどの場所に入れるかによって表現が変わるところが面白いと思います。テクニックはいろいろありますよ。たとえば、肘には「蜘蛛の巣」のモチーフをよく入れるんですが、肘に「立入り禁止」の看板を彫って、その周りに巣を張れなくて困っている蜘蛛を彫ったり。
依頼してくれた方の体に他の彫師さんの作品が入っていて、その近くに僕の作品を彫ることもあります。もしハートの絵柄が入っていたら、「じゃあ僕もハートの絵柄に合うデザインを彫りましょうか?」と提案することも。ただし、もともと入っているタトゥーのストーリーを壊さないようには気を付けています。タトゥーの世界のしきたりにそこまでこだわっているわけではないけれど、そういうマナーは大切だと思いますね。 逆に「カバーアップ」といって、前のタトゥーの上から僕のタトゥーできれいに消すというオーダーの場合もあります。 ーなかでも印象に残っている施術はありますか。 たくさんありますが、ひとつあげるなら2年ほど前に「天使のキャラ」を後頭部の辺りに彫ったことがあります。髪の毛が生えている位置にとても小さく、ひとつだけ。 理由を聞くと、絶対にタトゥーが見えてはいけない職業の方でした。本人も見ることができない位置なのに、どうしても僕のタトゥーを彫りたいと言うんです。その人にとってタトゥーは「お守り」のようなものではないかと思いました。