医療スタッフが頻繁に自宅に上がり込む状況に気疲れしてしまう【老親・家族 在宅での看取り方】
【老親・家族 在宅での看取り方】#120 在宅医療を開始した患者さんのご自宅には、医師や看護師らさまざまなスタッフが定期的に伺うことになります。 夫婦ともに認知症で夫に先立たれた妻「パパのところに行けるわ」と眠るように… 患者さんやご家族のサポートのためとはいえ、他人が頻繁に自宅に上がり込む状況に戸惑いを見せるご家族も少なくありません。 十分に事前の打ち合わせを行い、さまざまなケースを想定し、覚悟して臨んだにもかかわらずです。 自宅での療養を開始して初めて分かることもあり、介護を行いながら、私たち在宅医療スタッフを迎える日常に、いつしか気疲れしてしまう患者さんやご家族も珍しくないのです。 仮に、そのような兆候が見られた場合は、病院では考えられないことですが、患者さんの状態によっては看護師の代わりにご家族にあえて医療的ケアも担っていただき、精神的負担を軽減する場合があります。 「看護師さんは週2回来ないとダメなんでしょうか? 教えていただければ私でできることはやります」 在宅勤務で、高齢のお母さまを介護する娘さんは、1日に何回も他人が自宅に出入りすることに抵抗がある方でした。 責任感が強い性格で、スタッフに頼りすぎることをよしとせず、お仕事がお忙しい中、自分のできることを増やし、いつしか医療・介護の手技を積極的に看護師から学ぶようになりました。 点滴の流れを調節する器具であるクレンメの閉じ方に始まり、2種類の輸液を調節できる三方活栓の扱い方をマスター。輸液を止めたとき、血管内にカテーテルをつなげたままにしておく場合があるのですが、その中をある溶液で満たし、血液の凝固を防ぐヘパリンロックの使用と、何本使ったかを日付とともにメモに残すなど、看護師と変わりなく患者さんのサポートをお手伝いしていただけるようにまでなったのでした。 「明日、いつごろに来ていただく予定でしょうか?」と娘さん。そして、こう続けます。 「いつも最後に私がヘパリン(点滴)のロックをしているんですが、明日は私が日中外出する予定で、戻るのが18時以降になります。もし可能なら18時以降に点滴が終わるようにしていただけないでしょうか? 大事をとって19時くらいに終わるようにしていただければ一番ありがたいです。午前中に来てもらうとなると、なかなか難しいと思ったので」 「明日ですと13時ごろの訪問予定となっておりますので問題ないかと思われます。伺うスタッフに共有しますね」(私) 病院や特養老人ホーム、サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)、自宅など、どの選択肢においても手続きが複雑だったり、人の出入りが増えたり、ほかの業者とのつながりが増えたりと、それぞれに長所や短所があり、それぞれに煩わしく思われる方がいます。 この娘さんのように、ご家族も積極的に介護に参加し、患者さんとご家族の精神的負担を減らすことは、在宅医療ならではの患者さんとご家族に寄り添うひとつの方法だと考えるのです。 (下山祐人/あけぼの診療所院長)