阪神・球児監督に大野豊氏が火の玉ストレート伝承? 完投できる投手育ててほしい
【球児にYELL 大野豊氏】阪神・藤川球児監督(44)とゆかりのある人物が思い出を語るとともに、激励のメッセージを送る「球児にYELL」。今回は、08年の北京五輪ではコーチと選手の間柄でともに戦った大野豊氏(69=本紙評論家)が新監督の現役時代を振り返りつつ、投手育成やチームづくりに期待を寄せた。 藤川監督は現役時代から非常に礼儀正しく、優しい性格という印象がある。当時から一言一言、言葉の重みも感じた。物事をしっかり捉え、考えをはっきり言葉に出して伝えることができる。そういう人間性、人間力を持っている。だからこそ、監督としてもしっかり選手に物事を伝えることができると思う。 思い出の一つが08年の北京五輪だ。当時はコーチと選手の間柄だった。「火の玉ストレート」が代名詞であったように、あのボールがあれば相手が外国人選手であっても抑えることができると思った。それが日本代表メンバーに選んだ一つの理由だった。短い期間ではあったが、同じ目標に向かって戦えたことは本当に良かったし、私の勉強にもなった。 ある時、彼にストレートの握り方を聞いたことがあった。普通は人さし指と中指の間に1本、指が入るぐらいの間隔を空けてボールを握る。しかし彼はひと差し指と中指をくっつけて握っていた。その握りで、しかも両指の第一関節を立てて投げるイメージと言っていた。あの独特のストレートはこうやって投げていたのかと改めて感じた。指を立てるイメージで投げている投手に初めて出会った。 今後、投手の一人一人に同じ握り方を教えることはないだろう。しかし一人ぐらいは同じ握り方の投手が出てくるかもしれない。そこは興味深い。また、今は投手分業制の時代だが、投手出身監督として完投能力がある投手を一人でも、二人でもつくり上げてほしい。完投できるだけのスタミナとタフさと強さ。特に若い投手をどう成長させるかは非常に楽しみなところだ。 コミュニケーション能力が非常に高い人物でもある。持っている信念も強い。大いに暴れてほしいと思う。若さを前面に出して。困難があっても乗り越えるだけの柔軟性もあると思う。現役時代はマウンド上で打者の反応を見て投げていたり、計算して投げていた。 監督という立場は大変だ。ただ、藤川監督の持ち味、人間性、芯の強さなら大丈夫。カープのOB会長としての立場で言えば手ごわい人がタイガースの監督になったと感じる。あまりカープをいじめないでほしいと思うね。それでも楽しみな戦いが見られると思うと今からワクワクもする。監督として強いチームをつくり上げてほしい。カープのOBではあるものの藤川監督率いるタイガースも応援したい。来春のキャンプで会うことが非常に楽しみだ。(本紙評論家)