今話題「シュトレン」て?作り始めて35年、年間5000本。飛騨高山の「トラン・ブルー」が奏でる日本最高のシュトレン
今、日本でも注目されているパン菓子があります。それは「シュトレン」。「シュトーレン」とも表記されるドイツで古くから食べられている伝統的なパン菓子。たっぷりのバターが入った生地に、ラム酒などの洋酒に漬けられたドライフルーツやナッツなどが練り込まれ、表面は粉砂糖がまぶされた真っ白な見た目が印象的です。その見た目から、諸説ありますがイエス・キリストが生誕した時に使われたおくるみや枕ともいわれています。 ここ数年、パンやお菓子好きの間でもクリスマスケーキに並ぶ“年末のご馳走”として、老若男女問わず注目を浴びています。今ではパン屋はもちろんパティスリーからホテルのブティック、コンビニエンスストアやスーパーでも販売されるように。多種多様化が進むシュトレンですが時代を超えて、今最も多くの人に愛され、また執筆している編集長である私も愛してやまないシュトレンが飛騨高山にあります。それは「トラン・ブルー」。今回、この超繁忙期の真っ只中に「トランブルー」のシェフをつとめる成瀬さんにお話を伺うことができました。 なぜシュトレンを始めたのか、また「トランブルー」のシュトレンはなぜこんなにも多くの人に愛され、そしてなぜこんなにも美味しいのか?
4代目が紡ぐ新しい風とシュトレンとの出会い
飛騨高山にある「トラン・ブルー」は、成瀬 正さんが立ち上げシェフをつとめるお店です。もともと創業は1912(大正元)年のパン製造会社「なるせ」の4代目。長年、学校給食の卸業を担ってきた「なるせ」は高山で絶大な知名度を誇るものの、成瀬さんは当初継ぐつもりがなかったという。なぜ継ごうと思ったのか、伺うと、学生時代にすでに70年も続いていたこのお店を“先代、そして先々代がどういう想い出繋いできたのか、そう考えると尊敬の念とその火を消したくない”そんな気持ちで胸があふれたんだとか。 “老舗であろう”と思うけれど、新しい風を吹き込ませなければいけない。それで「トラン・ブルー」を立ち上げたそうです。トラン・ブルーの意味は高度成長期の日本を東西南北に駆け抜けた「ブルートレイン」のこと。今こそなくなってしまいましたが、長い道を少しずつ進んで終着地へと向かう、そんな意味が込められています。 成瀬さんは2005(平成17)年、ベーカリーのワールドカップとも言うべき「クープ・デュ・モンド・ド・ラ・ブーランジェリー」で世界3位に輝いた実績の持ち主。そんな実績を持つ成瀬さんがシュトレンに出会ったきっかけは「パン技術研究所」だったそう。 成瀬さん「シュトレンを作り始めたのは35~36年前です。その当時、ドイツに面白いものがあるよ、と教えてもらい知ったのがきっかけでした。大学を卒業しパン屋で修行後、パンを科学的に分析するパン技術研究所に通っていました。なぜ発酵するのかとか、実技を学べるところでした。当時の講義の中で、クリスマスシーズンの色々な世界のパンを学ぶ講義があり、そこで出会ったのがシュトレンです。見た目は真っ白ですし、食べてみたらスパイスの味やフルーツの味、お酒の風味。これは……と衝撃的だったんです。」