彼氏に振られたけど悲しくない…「大して好きじゃなかった」のでしょうか?
別れの前の感情は「執着」だったのかも
「この感情ってどういうこと?(振られても納得)」と題する女性からの投稿が、掲示板サイト「発言小町」に寄せられました。2日前に交際相手から電話で振られたというトピ主さん。2週間前から「冷められたかな」という予感はあり、同じような状況の人をネットで検索しては一喜一憂しつつ、仕事に身が入らないほど落ち込みましたが、「ここまで落ち込むってことは、自分は彼のことが大好きなのだな」と改めて思ったのだとか。しかし、実際に振られた後は、悲しみ、つらさ、後悔といった感情が一切湧いてこず、「自分で自分の感情が理解できない、信じられない」とつづっています。 投稿によれば、いざ振られてみると「やっぱそうか~」と納得し、心のしんどさが一気に消えたとのこと。好きな人から振られたら普通は悲しい気持ちになるだろうに、そうはならなかったということは、「そこまで好きじゃなかったということなのか?」と思ったそう。一方で、「彼を好きじゃなかったら、冷たくされた2週間もしんどくなかったと思う」とつづっており、自分自身の感情を図りかねているようです。 今回のお悩みでは、「好き」という感情と混同されがちな「執着」について考えてみるとよい気がしました。 執着する気持ちは、人、所属する組織、成功、人気、地位、お金、所有物、思い出など、およそ何に対しても生まれます。冷静に考えれば、それがなければ生きていけないというわけではないのに「どうしても捨て難い」「誰かに取られたくない」などと思っているものは、人それぞれあると思います。 人間関係でも、執着はよく起こります。相手の気持ちや行動は他人が所有したり、コントロールしたりできるものではないのに、自分のもののような気がして執着してしまう。友人関係などでよく「友達をとられた」なんて言う人がいますよね。 そして、友人関係以上に、恋愛関係は執着が起こりやすくなります。円満な時期には問題になりにくいですが、関係解消の障害となることは多いです。明らかに気持ちが離れているようなケースでも、執着心が消えないためにスムーズに別れられない、ということはしばしば起こります。 執着している対象と関わりを持つほど、あるいは対象のことを考えるほど、執着心は刺激されます。トピ主さんはこの2週間、「彼の様子がおかしい」「冷たくなった」「別れるつもりなのだろうか」などと彼のことを考え続けたため、一時的に執着心が増幅してしまっていたのではないでしょうか。彼との別れを想像すると、失い難い関係に感じてしまい、「彼がいなくなったら自分はどうなるの!?」と不安が生じていたのではないかと想像します。 一般的に、執着心が増幅しやすいシチュエーションは、「何か手に入りそうものがある瞬間」や「手にしたものを失いそうな瞬間」です。しかし、いざ手に入ってみると(失ってみると)、つきものが落ちたような感じになり、執着心が落ち着くケースは少なくありません。 彼に別れを告げられた後、トピ主さんが悲しくもつらくもない、後悔もないという、すっきりした心境になれたのは、彼との別れが決定したことで、選択の余地がなくなったからかもしれません。振られる予感で頭がいっぱいだった2週間は、一時的に彼への執着心が高まっていたものの、結論が出たことで落ち着いた、ということです。 執着心が一時的に増したり和らいだりする感覚は、買い物や整理整頓で考えてみるとわかりやすいです。例えば、限定品のセール中、周りの勢いに押されて並んでみたけれど、早めに売り切れてしまったとき。買えないという結論が出ると、「よく考えたら、大して必要じゃなかったかも」「高いものを買わなくて済んだな」などとホッとした感覚になることはあるかと思います。 あるいは、整理整頓をしようと仕分けをしたものの、なかなか捨てられない、というとき。思い切って捨ててしまえば、どんなものを捨てたかすら、すぐに思い出せなくなり、「あの執着心はなんだったろう?」と思うなどしますよね。 形の有る無しに関わらず、手に入りそうなものが入らなかったり、自分の持ち物だと思っていたものを失ったりすることは、多くの人の心に「残念」で「不安」な気持ちを生じさせます。しかし、失ったり手放したりしてみると、その先にまた別のものを得られるケースが少なくないということも、また多くの人が理解していることだと思います。