政治資金規正法の改正は問題の本質ではない?「調達格差」が政権交代起きない弊害に 元衆院議員の菅野志桜里弁護士に聞く【裏金国会を問う】
岸田文雄首相は今国会での政治資金規正法の改正を表明し、議員本人に対する責任を強化する方向で議論が進められている。 しかし、衆院議員を3期務めた菅野志桜里弁護士は、自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件の本質はそこではないと指摘する。その真意はどこにあるのか―。 注目すべきは政党交付金導入と引き換えに禁止になったはずの企業・団体献金の扱いだ、と訴える。(共同通信=帯向琢磨) ▽秘書が議員をかばえなくなるような制度改革が必要 ―議員時代、自民党の政治資金パーティーに問題意識はありましたか。 「販売ノルマがあって大変だという話は聞いたことがありますが、組織的に売り上げをキックバック(還流)しているとは、耳にしたことはありませんでした」 ―菅野さんは元検事でもあります。今回の捜査をどう見ましたか。 「政治資金規正法は、処罰対象が会計責任者となっています。安倍派幹部の起訴を期待する向きもあったと思いますが、会計責任者と共謀したとする議員の具体的な証拠がなければ起訴はできないわけですから、限界があったのでしょう。証拠を超えて起訴することの方がむしろ怖いので、規正法の処罰対象に議員を追加するという抜本的な治療が求められます」
―「政治とカネ」の問題はたびたび問題になっています。政治資金の透明性をどう確保していくべきでしょうか。 「永田町には世間の常識とは違う独特の職業倫理観があります。例えば、仕える議員のバッジを守るために、できるだけ議員に責任を負わせないようあえて詳細を報告しない―。こうした文化が秘書に脈々と受け継がれています。だから、政治資金収支報告書の提出時に議員の署名を求めるなど、秘書が議員をかばうことができなくなるような制度改革が必要になります」 「政党から議員個人に支給される『政策活動費』、旧文通費も議論の的になったので、合わせて透明にしていくべきです。あとは企業・団体からの献金やパーティー券の購入など『自由な調達』はこのままで良いのかということもきちんと考えるべきでしょう」 ▽企業・団体献金の規制が肝、過去に禁止を約束したはずだ ―野党は企業・団体献金の禁止を強く求めています。企業・団体献金は、資本金の額や構成員の数に応じて年間750万~1億円を政党や政治資金団体に献金できるというものですが、どのような弊害があるのでしょうか。