50代、金融機関の「人事部担当」が絶句…パワハラを訴えた「20代の女性社員」の驚きの相談相手
労務相談やハラスメント対応を主力業務として扱っている社労士である私が労務顧問として社労士として企業の皆様から受ける相談は多岐にわたります。 【マンガ】5200万円を相続した家族が青ざめた…税務署からの突然の“お知らせ” 経済や社会情勢の変化によって労働問題やハラスメントの捉え方も変わり、「明らかにアウト」「明らかにセーフ」といった線が引きにくい時代になりました。その中には「アドバイス」か「ハラスメント」なのか、客観的な線引きが難しいこともあります。 今回は先輩社員から後輩社員への親切心でのアドバイスがハラスメントとして受け取られた相談について、匿名化した事例を通してご紹介します。
若手の女性社員が頭取に直訴した
社労士である私の元へ相談を寄せたのは、地方金融機関でDEI室長(※)を勤めるT橋さんです。T橋さんの勤務先は商圏内に数十店舗を構え、保守的で手堅い社風で知られています。 数年前に人事部の一部が分離する形でダイバーシティの推進と実効性を担保する部署がおかれ、そこにハラスメント相談室が設置されていました。 「相談というのは、A井のことなんです。うちの頭取が、A井のパワハラの調査をしろと」 A井さんは50代前半の主任社員で、社歴は30年を超えるベテラン。新卒で入社後、数年にわたって窓口を担当し、妊娠を機に一度は退職しましたが子育てがひと段落したタイミングで復職した女性です。 まだDEI室になる前の当時の人事部は、女性社員の多様な働き方のモデルケースとしてA井さんの復帰を歓迎。昇進も嘱望されているのですが、家庭にケアが必要な高齢者がいるため、本人の希望によって主任級にとどまっているという人材です。 A井さんは温厚で人当たりがよく、面倒見がいい性格で、本人いわく「相撲部屋のおかみさんタイプ」。私も以前に研修でお会いしたことがありましたが、確かに他人をして頼りたくなるような雰囲気を持った人でした。 そんなA井さんがパワハラをしている、という相談はT橋さんにとって青天の霹靂でした。 「この相談はハラスメント相談窓口に持ち込まれたものなんですか?」 「実はそうではなくて、うちの頭取に直接、N坂という社員から直訴があったんです」 実は、A井さんはハラスメント相談窓口の相談員を一人で担当していたのです。N坂さんから見れば、ハラスメントを本人に訴えることになるため、相談を控えたのでしょう。そのタイミングで発生したのが、頭取と新入社員の談話の時間でした。