50代、金融機関の「人事部担当」が絶句…パワハラを訴えた「20代の女性社員」の驚きの相談相手
「この程度でパワハラ?」
この会社では1年におよぶ新入社員研修の総仕上げとして、頭取が直接新入社員に訓示を行い、軽食も交えた談話の時間を毎年設けています。その際に頭取直通のメールアドレスを掲示するのが伝統になっていますが、そのアドレスへN坂さんは談話のお礼とともに告発メールを送ったのです。 メールには『A井さんからパワハラを受けている、私だけではなくて被害者はたくさんいる、A井さんが原因で辞めた人もいるので対応してほしい』と記載があったとのことでした。 そのメールを受けて頭取が呼び出したのは人事担当の常務取締役とT橋さんで、どういうことなんだと厳しく叱責があったそうです。 「『そんな話は上がってきていない、そういう人間がパワハラ相談を受けるということは人選ミスだ、握りつぶしているのか』とすごい剣幕でした。 でも、私はA井は適任だと思っています。『訴訟も辞さない』という社員の話を、A井が聞いてくれたことで考え直してくれた実績もあるんです。だから……」 私はT橋さんの言葉に少し危険なものを感じましたが、黙って続きを促したところ、N坂さんがA井さんから受けたとするパワハラの中身は下記のようなものでした。 ●服装やメイク、髪型について口を出してくる (「もっと笑顔のほうがいい」「髪の色が少し明るすぎるかも」「シャツを着たほうが感じがいい」など) ●第三者に対する言葉遣い、特に社内での会話やメールの言葉遣いについて「この言い方だと感じが悪い」と指導してくる ●仕事の進め方について、実地研修の担当者でもないのに口を出してくる ●休憩時間に雑談に混ざるよう強制してくる 「正直、自分としてはこの程度でパワハラと言われるのか?と思いました」 そう考えるT橋さんは、自分がヒアリングを行えば、バイアスをかけて聞いてしまう可能性があるからと、直接の上司である自分に代わり外部社労士の私にA井さんのヒアリングを行ってほしいというものでした。 …つづく<まさかこれで訴えられるとは! 後輩へのアドバイス、親切心でも「言ってはいけない」ワケ…思わぬ《パワハラ騒動》に関係者が青ざめた>実際に、村井氏がヒアリングしたなかから、何がパワハラに該当するのか、また再発防止の解決策を明かします。 (※)3つの要素「Diversity」「Equity」「Inclusion」の頭文字をとった略語。社員それぞれの多様な個性が最大限に活きることがより高い価値創出につながる、という企業経営の考え方
村井 真子(社会保険労務士・キャリアコンサルタント/経営学修士(MBA))