年末調整が昔より大変になった3つの理由と、間違えた時の新しい対処法
理由3:所得控除の種類が増えた
一定の要件を満たす生命保険に加入している方は、生命保険料控除という所得控除を受けられます。 昔の生命保険料控除は2つの区分(一般の生命保険料控除、個人年金保険料控除)でしたが、介護医療保険料控除が新設されたため、現在の生命保険料控除は3つの区分になっているのです。 また3つの区分になった時に、控除できる上限額などが改正されたのですが、昔(2011年12月31日以前)に契約したものは、改正前の上限額などが適用されます。 ただ2012年1月1日以降に契約を更新、特約を付加、転換を実施した場合は原則的に、3つの区分になった後の上限額などが適用されるため、かなり複雑になったのです。 損害保険の分野に関しては、損害保険料控除が廃止されると共に、地震保険料控除という所得控除が新設されました。 ただ一定の要件を満たす長期損害保険契約の保険料は、地震保険料控除の対象になるという経過措置があるため、こちらも複雑になったのです。 その他にシングルマザーやシングルファザーなどが受けられる、ひとり親控除という所得控除が新設されています。 このように所得控除の種類が増えると共に、経過措置で内容が複雑になったというのも、年末調整が大変になった理由のひとつです。
e-Taxで確定申告を行うという新しい対処法
年末調整が昔より大変になったのは、理由1~3に記載したように、(B) で給与所得から控除する所得控除が複雑になったからだと思います。 そのため年末調整の書類を記入する際には、国税庁のウェブサイトなどを見て、それぞれの所得控除を受けられる要件を満たしているのかを、改めて確認したいところです。 本来は対象外の所得控除を受けた場合や、本来は受けられる所得控除の漏れがあった場合には、勤務先に年末調整のやり直しをお願いしたり、自分で確定申告を行ったりするという対処法があります。 自分で確定申告を行う際は、紙の書類に記入して税務署などに提出するより、スマホ(パソコン)とマイナンバーカードを使って、e-Taxで確定申告を行うという、新しい対処法の方が良いと思います。 その理由としてマイナポイント事業の影響などにより、マイナンバーカードの人口に対する交付枚数率が8割近くに達したため、昔よりもe-Taxを利用しやすくなったからです。 また年末調整の後に勤務先から配布される「給与所得の源泉徴収票」を、スマホのカメラで撮影すると、この中のデータが自動入力されるので、所得税の知識が少ない方でも取り組みやすいと思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)
木村 公司