46歳で「司法試験合格」を目指した作家が7年の時を経て合格するまでの「苦悩」のすべて
再びゼロからの挑戦
挑戦を決めたものの、法律知識は皆無である。親戚や友人にも、法曹どころか、法学部出身者すらいない。しかも、私は国内の大学で学んでいない。 私は高校を卒業して直ちに、18歳でひとりアメリカに渡った。その契機となったのは、高校2年の夏休みに体験したアメリカ西海岸でのホームステイである。渡米資金はスーパーのレジのアルバイトで貯め、足りない分は母親が足してくれた。 およそ1カ月間の海外での生活体験は、刺激と感動に溢れ、想像していた以上に貴重な体験となった。その後日本の高校に戻ったはいいが、徐々にある願望が膨らみ、抑えきれなくなってしまったのだ――。 〈このまま社会に決められたレールを歩むより、アメリカの大学に行ってゼロから自分を試したい!〉 渡米後はコロラド州の語学学校を経て、南カリフォルニア大学に入学。シアターアーツと国際関係学を学び、1993年に卒業した。その後いったんは帰国して東京で演劇活動をしていたが、26歳のときに再渡米し、書く仕事に携わるようになった。最終的にアメリカから帰国したのは2002年、31歳のときだ。ふり返ると、私の無謀さと好奇心の芽は10代までさかのぼるのかもしれない――。 とにかく、まずは情報収集だ。〈司法試験、社会人、40代〉といったキーワードでネット検索していくと、予備校のウエブサイトなどがヒットした。さらに見ていくと、「不可能」といわんばかりのネガティブな書き込みばかりが目についた。 そんなに難しい試験なの? 私は法務省のウエブサイトにアクセスして、年度ごとに掲載されている過去の問題のファイルを開いた。 まずは民法……。よし、日本語は読める。まったく理解不能だと勉強する気にもなれないが、問題文が読めるならなんとかなる気がしてきた。 さらには司法試験には受験資格があること、そのためには司法試験予備試験に受かるか、法科大学院(ロースクール)を卒業しなければいけないことを知った。 〈この予備試験にさえ受かればいいのか、じゃあ死ぬほどがんばれば数年で受かるだろう。〉 当初はこの程度の認識だったから、無謀なスタートではあった。