来秋スタートの女子プロサッカー「WEリーグ」初代チェアは元ウグイス嬢…異色の就任経緯と成功条件とは?
そして、岡島チェアが2004年から勤め、要職に就いていたアメリカ三大投資銀行のひとつ、バンクオブアメリカ・メリルリンチの文字が綴られた名刺を見た金田氏は「あなたのような方にお願いできれば」と喜び、すぐにJリーグの村井満チェアマン、JFAの今井純子女子委員長を紹介した。 すでに構想が進められていた女子プロリーグのスタートが来年9月に、名称が女性の活躍や社会進出を意味する『Women Empowerment』の頭文字を取ったWEリーグに決まったなかで、岡島チェアを取り巻く状況がさらに大きく動く。参加クラブのスタッフや役職員に女性の積極起用を求めていたなかで、リーグそのもののトップにも女性を登用するべきだ、とする方針が確認されたからだ。 「私のみならず、田嶋会長や準備室を含めた素案のなかで『岡島さんが適材だ』となりました。WEリーグをスタートさせるにあたって競技面、事業基盤、社会面を見たときにもそうですし、選手たちが今後、現役を終えた後には岡島さんのような、社会性を伴った女性になってほしいというモデルにもなる人材であるところから、満場一致で『お願いしましょう』という運びとなりました」 岡島氏にチェア就任を要請するに至った理由を、佐々木準備室長はこう説明する。拠点をアメリカに置き続ける今後に関しても、前述したように会議の多くがオンラインになった社会状況の変化と、新型コロナウイルス禍が収束した後には従来通り年に6回ほど岡島チェアが帰国すること、そしてWEリーグ事務局内に専務理事や事務局長を常勤させることで支障はないと判断された。 現状のWEリーグは今月末を締め切りとして、6チームから最大10チームを予定している初年度の参加クラブを募っている。10億円を想定する事業規模の確立や、苦戦が予想される観客動員の振興策などが数多く待つ今後へ、何よりも真っ先に取り組むべき課題を岡島チェアはこう明言した。 「WEリーグの理念に協賛していただく、パートナー企業を探すことだと思っています。長期的に成功させていくには、結局はお金がとても大切です。すでに私や他の方のネットワークを使って、いくつもの企業に声をかけていまして、前向きに検討していただいているところもあります。それを早めに発表できるような形にまでもっていくことが、一番の重要課題だと思っています」 任期は2年。予算にWEリーグへの補助金を計上しているJFAのサポートを受けながら、日米の金融業界で培った人脈や知見をフル稼働させる。黎明期の礎作りに奔走してから40年あまり。数奇な運命に導かれた岡島氏はチェアという肩書きとともに、女子サッカーに携わるすべての人間が夢見てきた、待望のプロ時代へ羽ばたいていくための土台固めに尽力していく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)