早大発スタートアップが開発強化、究極「ダイヤモンドパワー半導体」の性能
7億円を調達
早稲田大学発スタートアップのパワーダイヤモンドシステムズ(PDS、東京都新宿区、藤嶌辰也最高経営責任者〈CEO〉)は、第三者割当増資により複数のベンチャーキャピタル(VC)から計約7億円の資金を調達した。2025年にダイヤモンドパワー半導体のサンプル品の提供を始める。自動車向けインバーターなどでの応用を視野に顧客評価を進め、今回の資金調達により開発や組織体制を強化し、ダイヤモンドパワー半導体の社会実装に向けた取り組みを加速させる。 今回の第三者割当増資はJICベンチャー・グロース・インベストメンツ(東京都港区)と早稲田大学ベンチャーズ(同新宿区)、みずほキャピタル(同千代田区)、QBキャピタル(福岡市早良区)が引き受けた。 ダイヤモンドパワー半導体は現在主流のシリコンに比べ、高温・高電圧でも稼働し、次世代パワー半導体材料として期待される炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)よりも性能で優れるため、究極の半導体材料とされる。 ダイヤモンド半導体はp型と呼ばれるホール(正孔)が流れるトランジスタを作れる。SiCやGaNは電子が流れるn型しか作れない。PDSはp型とn型を組み合わせた縦構造のダイヤモンド金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)を開発。縦型構造は電流密度を高められ、大電流化の必須技術だ。また、両型のトランジスタを使うことでより高速動作できる。 加えて、ゲート端子に電圧を加えていない時に電流を流さないノーマリーオフ動作するトランジスタ技術も開発済み。ノーマリーオフはゲート電圧をかけなければトランジスタがオフ状態になり、異常動作を防げる。 PDSは早大の川原田洋教授らが開発した技術の実用化を目指すスタートアップ。早大や九州工業大学と共同研究を行う。大学の半導体開発設備を使い、ファブレスで運営する。