「学歴フィルター」はそもそも問題なのか?
混迷を増す就活戦線
今年の就職戦線は学生側の売り手市場といわれますが、内実は思いのほかに厳しいようです。就活解禁は例年よりも遅い3月でしたが、その後は各社の足並みが揃わないまま進行しています。そのため就活生たちは「内々定」「滑り止め内定」を得てからもなお、様々な規模と業種を視野に入れて終わりなき転戦を強いられています。 そんななか、採用側の一部企業がこっそり「学歴フィルター」なるものを設定しているのではないかと話題になっています。セミナーや説明会というファースト・コンタクト時に、大学名で学生を選別していると就活生側が問題視しているのです。なお大学名による序列は学校歴と呼ばれますから、正しくはこれは就職活動の初動段階での学校歴による人材選別というべきです。 そもそも学校は人材を序列付け振り分けるための公的システムです。学歴に基づく選別は採用側と応募側のマッチングを効率化するには必須です。実際そのために非大卒層は大卒新規労働市場から締め出されています。学歴というものは、そもそも仕事を効率よくみつけるためのフィルターに他ならないのです。 昨年の四年制大学の卒業者数56万人のうち、就職希望者はおおよそ41万人でした。その数は今年も大きく変わっていません。現在の若者たちの同年人口の総数はおよそ120万人ですから、大卒新規労働市場はその三分の一に一挙に初職を割り振る巨大なイベントです。しかし、四大卒層がここまで多くなると、大卒枠という大きな括りではフィルターとして機能しなくなります。 この10年ほど企業の採用部署は、応募者一人ひとりの特性を見極める方針を前面に打ち出しています。けれども新卒労働市場に入ってくる40万人がみな同じ水準の人材であるとみなして、そこから自社にマッチする人材を探し出すというのはたいへんな困難なことです。にもかかわらず企業側は採用に至らないであろう応募者にも丁重に対応をしていますし、学生の側もその分だけ多くの企業と接触を繰り返すことになります。就活期間の長期化の一因は、こうしたマッチングの悪さにあるといえます。