安倍首相3選で改憲議論はどう進む 地方の危機感と野党連携
安倍晋三首相(党総裁)が石破茂元幹事長を抑えて3選を果たした自民党総裁選。安倍首相は残りの総裁任期3年間の中で憲法改正に「チャレンジ」することになる。秋にも召集される臨時国会で党としての憲法改正案の国会提出を目指したい意向を示しているが、来年には統一地方選、参院選のほか、天皇陛下の退位と改元、大阪G20サミット、10月には消費税率引き上げと重要な日程が続く。上智大国際教養学部の中野晃一教授(政治学)は、安倍首相は3選したものの、今後の改憲論議は必ずしも順調には進まないのではないかと語る。中野教授に、総裁選の結果と憲法改正に向けた今後の展望などについて聞いた。 【図解】憲法改正の手順は 国会発議はいつになる?
統一選へ地方の危機感
今回の総裁選では、安倍首相が国会議員票で8割を固めながら、党員・党友による地方票では石破氏が45%を得票したことが注目されている。中野教授は、国会議員票と地方票の割れ方について「過去の総裁選ではおそらくここまで乖離していない」と指摘する。 総裁選期間中には、齋藤健農林水産相が安倍首相陣営員から「圧力」を受けたと発言したことや、同様に神戸市議が「恫喝」されたと明かしたことが伝えられた。安倍首相は齋藤農水相への圧力についてテレビ番組で否定したが、中野教授は「投票したのは自民党員なので、単なる自民党のファンではなく、地方選挙でも国政選挙でも自民党のために動いている人たち。他にも声には出さないが不快な思いをした人がいて、そのうちの一定数はやむを得ず安倍首相に投票したのではないか。45%が離反したというのは、かなり大きな数字だ」とする。 こうした「地方の離反」の背景には、「地方が切り捨てられている」という感覚があるのではないかと中野教授は語る。 安倍首相が本当にやりたい政策は、憲法改正に向けた動きや安全保障関連法、特定秘密保護法、共謀罪含む組織犯罪処罰法などであるとして、「やりたいものの後回しにされている、地方ではそういう感覚」。アベノミクスについても「経済政策でさえ東京中心になっている。五輪特需にしても、災害対応にしても、東京が良ければ後がついてくる、という発想の人が(政権に)少なからずいるのだろう」。 安倍政権は、地方からの人口流出や人口減少などへの対策として「地方創生」に取り組んでいるが、「アピールはするが実効性があるのか。本当にやろうとしているのかは怪しい」と疑問を呈する。 来年春には統一地方選を控えるため、地方議員らの危機感はより切実になるという。「(地方の)現場の肌感覚では、安倍首相は“裸の王様”的になっているところがあって、自民党が圧倒的な多数で3選させることになったら党のイメージが悪い、統一選を戦える状況ではないという危機感を持っている」 一連の森友・加計学園問題や財務省の公文書改ざん問題などをめぐる対応では、安倍政権の「異論を聞かない」「自分のためにルールを変える」といった独善的な姿勢もみられたと述べ、「大らかな保守の人が多い地方レベルからすると反発もあるのでは」と見立てを語った。