安倍首相3選で改憲議論はどう進む 地方の危機感と野党連携
改憲に突っ走るしかない?安倍政権
安倍首相は20日の総裁選後の記者会見で、「70年以上一度も実現してこなかった憲法改正にいよいよ挑戦し、平成のその先の時代に向かって新しい国づくりに挑んでいく」とあらためて改憲への意欲を示した。そして改憲の方向性については、自身の3選をもって「力強い支持を得た」との見方を示した。 総裁選では「自衛隊の9条への明記」「教育の無償化・充実」「緊急事態対応」「参議院の合区解消」という自民党の憲法改正推進本部でまとめた4項目の改憲イメージについて言及し、特に9条への自衛隊明記で「違憲論争に終止符を打つべきだ」と主張してきた。一方の石破氏は、戦力不保持と交戦権の否認を盛り込んだ9条2項を維持したままの安倍首相案に否定的な見方を示し、首相自身の口から改憲方針について説明することを求めていた。 今後の憲法改正論議はどう進んでいくのか。中野教授は「安倍首相は憲法改正を実現すると言い続けるだろう。逆にいえば、憲法改正を先送りすると言うと、政権の求心力が失われてしまう」との見通しを語る。 改憲議論の入り口として、次の臨時国会ではバラマキ的な政策を並べるだろうと中野教授は予想する。安倍首相は20日の会見で、北海道地震や大阪北部地震、西日本豪雨と台風21号の被害に触れ、「強靭なふるさとづくりは待ったなしの課題だ。ただちに着手する」と述べ、補正予算で小中学校へのクーラー設置やブロック塀の安全対策などについて補正予算を組む考えを示した。 「臨時国会では震災復興などを打ち出し、『国民の安全を守るのは私だ』として憲法改正につなげていきたいと考えているだろう。復興支援のための財政出動は必要であり、震災対応での『バラマキ』が一概に悪いというつもりはないが、むしろこれまで対策が後手後手に回ってきたにもかかわらず、いわば改憲への露払いとして押し出してきていることに違和感を覚える」(中野教授) しかし、安倍政権が憲法改正に前のめりになればなるほど、各所でさまざまなハレーションが起きてくるのではないかと予測する。 連立与党のパートナーである公明党は、憲法9条の改正には決して前向きではない。来年は春の統一地方選だけではなく、夏に参院選も予定されている。「改憲に突き進んで、地方も公明党も付いてくるのか。(自民党の)8割の国会議員が支持したといっても、自身の当選がかかっているときに足並みが乱れる可能性がある」 また改憲派の議員の中にも、衆参国会議員で「3分の2」をクリアして憲法改正案を発議しても「国民投票で負けるようなことがあれば改憲ができなくなるし、政権が吹っ飛ぶ」と考える層がいるだろうとして、「その前に思いとどまらせようという動きが出てくることも考えられる」と述べた。 今月末には沖縄県知事選が投開票される。「与党が有利だと思うが、仮に野党候補が勝てば、政権側からすると改憲と言っている場合ではない、ということになる」