少子高齢化進む熱海・網代 地元のかつお節製造会社が飲食店で盛り上げる
この連載もいよいよ関東圏から飛び出した。訪れたのは、静岡県の人気観光地でもある熱海市。正確にはバブル期のような盛り上がりを見せる熱海駅周辺ではなく、熱海駅から電車で約15分、車なら約25分の網代(あじろ)だ。網代は、漁港や温泉で有名な街だったが、人口が減少しており、2021年の新型コロナウイルス禍には唯一の小学校が廃校になった。 【関連画像】「ごはんセット」に組み合わせることができる「本日のお刺身」(上)。左からスルメイカ、マグロ、あぶりしめさば。全て網代港で取れた魚だ。単品注文なら550円。「季節の焼き魚」は、スルメイカ、カマス、さば。単品注文は550円(下) 「だからこそ地元の人が集まれる場所がほしい」「地元以外の人もわざわざ足を運びたくなる場所をつくって、網代を盛り上げたい」と、かつお節製造会社を営む会社の社長が仕掛けたのは、かつお節と網代港で取れた海鮮が食べられる飲食店だった。 店名は「BUSHI MESHI(ブシメシ)」。由来は「削り節(ぶし)」と「飯(めし)」から。おしゃれな和風モダンな外観はスタイリッシュで温かみがある。 店内はゆったりとしたコの字形のカウンターで、12人が着席できる。入り口に入って左側の棚には、かつおの名産地である静岡県焼津、鹿児島県枕崎、鹿児島県山川から仕入れて自社で加工したかつお節のお土産がずらりと並んでいる。
目の前で削られたばかりのかつお節を食べられる
カウンター内には、自動でかつお節を削るミッドスライサーが設置されており、注文を受けてから目の前で削っている。 かつお節は繊細で、削り方や厚みによって味や香りの強弱が変わる食材だ。BUSHI MESHIでは厚さを0.02ミリメートルに設定している。この厚さにすることでかつお節の食感をダイレクトに味わうことができ、うまみも凝縮されるそうだ。。 営業は平日の昼帯の午前10時から午後2時30分(ラストオーダーは午後2時まで)のみ。メニューは数品に絞り込んでいる。1番人気は「おすすめセット」(1190円、以下、価格は全て税込み)だ。 料理のベースにはかつおの厚削りに白湯を注いで作っただし「BUSHI DASHI」が使われている。削りたてのかつお節と炊きたてごはん+日替わり味噌汁+付け合わせからなる「ごはんセット」に網代港で水揚げされた魚の「本日のお刺身」3種盛り、もしくは網代港の魚を戸田塩で味つけした「季節の焼き魚」串3本セットのどちらかを選べる。 かつお節は、味が凝縮されていて濃厚だ。最初はしょうゆをかけずに素材の味を存分に味わってほしい。ご飯のお代わりは必至です。ちなみにお店がおすすめする食べ方は、「ほやほや削り(鰹節)ご飯」(330円)に、静岡産の生たまご(150円)をプラスした“生たまごかつお節ご飯”。最高においしい。 本日のお刺身か、季節の焼き魚か、どちらを食べるか迷ったら、「おすすめセット」と組み合わせなかった方を単品で追加するのがベスト。1人前の量も少なめなので完食は余裕だ。それでも、おすすめセットと単品注文で、合わせて1740円と良心的な価格には頭が下がる。 この店を始めたのはかつお節製造会社の丸藤。同社はなぜ、飲食事業を始めたのか。代表取締役を務める藤田昌弘(ふじた・まさひろ)さんに話を聞いた。