新作が多数登場! 〈ワタリウム美術館〉でSIDE COREが見せる都市への視線|青野尚子の今週末見るべきアート
陶によるオブジェには《柔らかい建物、硬い土》というやや矛盾したタイトルがついている。 「街の中で見かける植木鉢や壊れた瓶、タバコを吸う人など、建物の外に勝手に置かれているもの、身体と都市の間にあるものからインスピレーションを得ました。陶器は土を原料にしていますが、微生物などで分解されて土に還るということはない。縄文土器などの陶器は文化や都市の象徴であり、土の中から発掘される土器には都市の記憶が残り続けるように思います」
2階の吹き抜けを見下ろせる3階のテーマは「行動」だ。SIDE COREが都市に介入してきた、そのドキュメントが展示される。《unnamed road photographs》は2017年ごろから携帯電話などで撮影してきた写真による作品。内部に光源があり、点いたり消えたりしている。
映像作品《untitled》は2021年に羽田空港近くのトンネルで、壁にTシャツの肩をこすりつけながら歩くというパフォーマンスを記録したもの。壁に付着したススでTシャツは汚れていき、ススがとれた壁には1本の線が残る。都市を身体的に捉える試みだ。
4階の《under city (ver. 2024)》は2023年、目黒観測井横の空き地で展示された作品をバージョンアップしたもの。「観測井」とは地盤沈下や地下水位を観測するための井戸を指す。目黒では2面のスクリーンで展示されたが、今回は5面だ。モニタやスクリーンは壁だけでなく、天井や床にも設置されている。
「見る人がいろいろな方向に向くようにしたいと思った。制作時の視点を追体験してほしいという意図もあります」 《under city (ver. 2024)》の映像では地下の雨水貯留施設や地下鉄の廃駅、地下駐車場などをスケーターたちが疾走する。通常、立ち入れないようなところにも特別に許可をとって撮影している。映像は編集されて、架空の地下空間が作り上げられている。 画面には地下でうごめく虫などの生きものもとらえられている。 「地上から地下に入ってまた地上に戻る。生態系の循環のような感じです」