天皇陛下64歳誕生日会見(全文) 能登半島地震の犠牲者に哀悼の意 ご家族への思いも
被災地に引き続き心を寄せていきたい
幹事社:新型コロナウイルスの位置づけの変更により、昨年は園遊会が再開され、両陛下での地方訪問も本格化しました。国際親善を目的としたインドネシアへの訪問には皇后さまも同行されました。行事や訪問先でのエピソードや、印象に残っていることをお聞かせください。皇后さまは昨年、還暦の誕生日にあたり、「これからまた新たな気持ちで一歩を踏み出し、努力を重ねながら、この先の人生を歩んでいくことができれば」と今後への思いをつづられました。ご結婚から30年、ともに歩んでこられた皇后さまへの思いとともに、送られたい言葉があればお教えください。 天皇陛下:新型コロナウイルス感染症の感染拡大の落ち着きを受けて、コロナ禍にあって開催されていなかった園遊会を昨年は春、秋と開催することができ、久しぶりに多くの皆さんをお迎えできてうれしく思いました。 6月には、全国植樹祭に出席するために岩手県を訪れました。高田松原津波復興祈念公園の国営追悼・祈念施設「海を望む場」において巨大な津波が押し寄せた広田湾を望み、東日本大震災当時のことを思い出しながら、犠牲となられた方々のご冥福をお祈りし、花をお供えいたしました。 東日本大震災津波伝承館では、震災での体験を後世に伝える活動などをされている方々からのお話をうかがい、震災の事実と教訓、そして、人々の体験や復興への思いなどを後世に伝えていくことの大切さを感じました。 奇跡の一本松のモニュメントを初めて実際に見ることができ、全国植樹祭の記念式典でも、奇跡の一本松の遺伝子を受け継ぐ南部アカマツの苗木を植えることができました。 また、記念式典では、奇跡の一本松を用いて製作された、いわゆる「津波ビオラ」などで構成される弦楽四重奏を聞くことができ、以前、私自身がそのビオラを演奏会で弾いたことを思い出しました。 この地域がこれまでたどってきた困難を思い起こしながら、全国植樹祭が開催されるまでに復興が進んできたことを、雅子とともに心からうれしく思いました。 今回訪れた陸前高田市、大船渡市や釜石市では、被災地の皆さんからじかにお話を聞くことができ、幾多の困難を抱えながらたゆみない努力を続けてこられた姿に心を打たれました。 皆さんのお話をうかがいながら、まだ課題が多く残されているものの、復興が着実に進んできていることを感慨深く思いました。被災地が新しいコミュニティ作りをはじめ、今後、真の復興を遂げていくことを心から願うとともに、被災地に引き続き心を寄せていきたいという思いを新たにいたしました。