天皇陛下64歳誕生日会見(全文) 能登半島地震の犠牲者に哀悼の意 ご家族への思いも
地球温暖化の問題は私たちが真剣に取り組まなければならない喫緊の課題
国内全体に目を転じると、自然災害や物価高などにより、多くの人々が様々な困難を抱えながら生活しており、支援を必要としているお年寄りや障害のある方、生活に困窮している方や生活困窮世帯の子どもたちなど、社会的に弱い立場にある人々のことが案じられます。 同時に、このような社会的に弱い立場にある人々を支え、その命と暮らしを守るために力を尽くされている方が多くいることをありがたく思っています。大変なことも多い中ではありますが、人々がこれからもお互いを思いやりながら支え合い、困難な状況を乗り越えていくことができるよう願っております。 地球規模では、地震や水害などの大きな自然災害が起きています。この1年においても、モロッコやアフガニスタンにおいて大きな地震が発生し、多くの人々が亡くなったり、負傷されたり、家を失い、避難生活を余儀なくされたりしています。 大雨による被害や山火事、深刻な干ばつなど、地球温暖化に伴うと思われる自然災害も世界各地で多発しています。ここに改めて、これら自然災害により犠牲になられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被害に遭われた方々にお見舞いをお伝えしたいと思います。 地球温暖化について、グテーレス国連事務総長は昨年7月27日の会見で、現在の状況を「地球温暖化の時代から、地球沸騰化の時代が来た」と警告しています。以前にも述べましたように、持続可能な世界を築いていくためには、世界の人々が知恵を出し合い、ともに手を取り合って協力していくことが今まさに求められており、地球温暖化の問題は、今、私たちが真剣に取り組まなければならない喫緊の課題であると思います。
若い世代が新たな世界を切り開いていく姿は明るい夢と希望を与えてくれた
また、世界各地で現在も戦争や紛争などが発生し、多数の人々の命が失われています。飢饉や貧困、抑圧や偏見などに苦しみ、生命や尊厳が脅かされている人々もいます。 世界が直面するこうした困難な状況に、深く心が痛みます。平和な世界を築くために、世界の人々がお互いの理解に努め、お互いを尊重し、お互いを思いやりながら協力していくことの大切さを改めて感じています。 このような中でも、この1年、明るい話題もありました。昨年の5月には、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類に移行しました。引き続き感染症の流行を注視していく必要がある中にあって、人々の日常生活が元に戻っていく上で、確かな明るさが見える年となりました。 科学技術の分野では、つい先日の2月17日、H3ロケットの打ち上げが成功しました。また1月20日には、小型月着陸実証機SLIMが月面へのピンポイント着陸に成功しました。「はやぶさ」や「はやぶさ2」に続き、宇宙開発の分野で長年にわたり積み重ねてきた技術が花開いたものであり、関係者の努力に敬意を表します。 生成AIなど、AIの技術の進展が注目されてきていますが、能登半島地震の被災地では、日本の優れた水処理技術とAIを結びつけた自律制御型のポータブル水再生システムの活用により、入浴や手洗いのサービスが提供され、厳しい状況にある被災者の方々の助けとなっています。 こうした取り組みは、若い人たちが中心となって設立した企業による取り組みと聞きました。全国各地から駆けつけたボランティアの活動を含め、若い人たちのこうした活力が、我が国の新しい可能性を切り開いていくことを期待したいと思います。 また、例えばスポーツの世界では、昨年開催された野球のWBCでの日本代表チームの3大会ぶり3回目の優勝や、米国メジャーリーグで活躍する大谷翔平選手が、史上初となる2度目の満票選出でのMVPに選ばれたこと。あるいは、将棋の世界で藤井聡太さんが王座のタイトルを獲得し、史上初の8冠を達成したことなど、若い世代の人々が日々の努力の積み重ねにより、新たな世界を切り開いていく姿は、私たちに明るい夢と希望を与えてくれました。