年金を60歳から受け取る「繰上げ受給」にはデメリットしかないと思っていましたが、メリットもあると聞きました。詳しく教えてほしいです。
繰上げ受給のメリット、デメリットは?
1.メリット (1) 生活費の確保できる 年金の繰上げ受給をすると受給額は減額されますが、60歳から65歳になるまでの5年間は年金を受給することができるので、その間の生活費を確保できます。 (2) 公的年金等控除が使える 受け取る年金額に応じて公的年金等控除を使うことができます。60歳で受給開始した場合には、5年間の受給期間で、この控除のメリットを享受できます。 なお、65歳未満の方で、所得が年金のみ、もしくは年金以外の所得が年間1000万円以下の場合の控除額は表1のとおりです。 表1:公的年金等控除額
(日本年金機構「所得金額の計算方法」より筆者抜粋) 2.デメリット 繰上げ受給のデメリットは、なんといっても受給額が減額されることですが、以下さまざまな制約などがありますので、留意する点があります(以下は一例です)。 (1) 繰上げ受給を開始すると、年金は生涯にわたり減額されます。つまり、取り消しができません。 (2) 国民年金の任意加入や、保険料の追納はできなくなります。 (3) 65歳になるまでの間、遺族厚生年金や遺族共済年金などの他の年金と併せて受給できません。いずれかの年金を選択することになります。 (4) 寡婦年金を受給中の方は、寡婦年金の権利がなくなります。 (5) 事後重症などによる障害基礎(厚生)年金を請求できません。
損益分岐点は?
60歳で繰上げ受給をすると、5年間前倒しで年金をもらえますが、65歳から受給した場合と比べると24%(注)生涯にわたって減額されます。年齢を重ねると、前倒しでもらった金額の合計がどこかで逆転する点、いわゆる損益分岐点が発生します。 (注:昭和37年4月1日以前生まれの方は30%) そこで、昭和37年4月1日以降生まれの方で、65歳で200万円の年金をもらえる人が、繰り上げをして60歳から受給した場合に、何歳で逆転するかをシミュレーションしてみます。 前提条件として、65歳で受給開始する方は毎年手取りで200万円の年金を受給でき、60歳で受給開始する方は24%減額された152万円を毎年手取りで受給するものとします。受け取った年金から支払われる社会保険料や税金などや、他の収入や家族構成など考慮していないので、あくまで目安としてとらえてください。 表2;受給開始年齢60歳、65歳で受給できる年金総額 (単位:万円)