考察『光る君へ』40話 一条帝(塩野瑛久)辞世の歌の「君」とは?「なにゆえ女は、政に関われぬのだ」中宮・彰子(見上愛)の憤りが道長(柄本佑)に届かない
大河ドラマ『光る君へ』 (NHK/日曜夜8:00~*10月27日は「衆院選開票速報 2024」の前、夜7時10分からの放送に変更)。舞台は平安時代、主人公は『源氏物語」の作者・紫式部。1000年前を生きた女性の手によって光る君=光源氏の物語はどう紡がれていったのか。40話「君を置きて」では一条帝(塩野瑛久)が崩御、さまざまな人物の運命が変化します。「君を置きて」の「君」とは? ドラマを愛するつぶやき人・ぬえさんと、絵師・南天さんが各話を毎週考察する大好評連載42回(特別編2回を含む)です。
罪のない恋なぞつまりませんわ
藤壺での彰子(見上愛)主宰『源氏の物語』鑑賞会は、定期的に開催されているようだ。もちろん一条帝(塩野瑛久)ご臨席のうえで。宰相の君(瀬戸さおり)が朗読しているのは33帖『藤裏葉(ふじのうらば)』。 「帝のおんかたちはいよいよ年と共に整われ、光る君と瓜二つにお見えになりますが……」 光源氏39歳。紅葉が美しく染まった秋の六条院に、源氏の兄・朱雀院と冷泉帝が揃って行幸し、華やかな宴が催される。冷泉帝は実は光源氏と藤壺の宮の不義の子……つまり実の親子 なので、成長とともに光源氏と瓜二つとなってゆく。そばに控える中納言──光源氏の嫡男・夕霧とも似ている。冷泉帝と中納言は実は兄弟なのだから。 和泉式部(泉里香)「華やかな宴の様子を延々と語りながら、秘かに父(光源氏)を同じくする帝と中納言でしめくくるなんて、お見事ですわ!」 一条帝「華やかで、しかも恐ろしいの」 栄華の底にある過去の秘密、それがじわりじわりと表に染み出す描写が確かに恐ろしい。 敦康親王(片岡千之助)が、 「藤壺は光る君を、まことはどう思っていたのであろうか」 「藤壺は光る君を愛おしんでいたと思うことにします」 など、物語の感想に寄せて、意味ありげな言葉で彰子に畳みかけてくる。父帝も公卿も揃っている前で大胆な……若さと情熱にやんごとなきお生まれが加わると、こうも怖いもの知らずになるものか。少年時代の光源氏そのものだ。 「不実の罪は必ず己に返ってまいりますゆえ」 道長(柄本佑)が釘を刺す。冒頭からスリリングな展開……! ピリッと走る緊張に、和泉式部が楽しそうに「されど左大臣様、罪のない恋なぞつまりませんわ」。そこに赤染衛門(凰稀かなめ)が合わせて「まことに、さようでございますね」「人は道険しき恋にこそ燃えるのでございます」。ウフフと笑うふたりに藤壺の空気が和んだ。 和泉式部は天然だろうが、赤染衛門は計算かもしれない。いずれにせよ、二大女流作家は頼りになる。
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