考察『光る君へ』40話 一条帝(塩野瑛久)辞世の歌の「君」とは?「なにゆえ女は、政に関われぬのだ」中宮・彰子(見上愛)の憤りが道長(柄本佑)に届かない
ファーストサマーウイカの台詞のテンポ
譲位の準備をという陣定での道長からの提案に、実資(秋山竜次)は「帝はまだお若い!」と反発する。32歳だ、確かにお若い。四納言のうち俊賢(本田大輔)、斉信(金田哲)、公任(町田啓太)は道長の意を汲むが行成(渡辺大知)はじっと考え込み、何も言えない。 父帝の体調不良を知り、己の将来への不安を口にする敦康親王に対して清少納言(ファーストサマーウイカ)が、「亡き皇后・定子様(高畑充希)のお忘れがたみ、敦康様以外のおかたを帝が(東宮に)お選びになることなどございませぬ」と力づけ、敦康親王の後見・隆家(竜星涼)が先走るなと彼女を諫めた。 ここで、おお……と感嘆したのだ。ファーストサマーウイカの台詞のテンポ、語尾の調子。清少納言が年を取っている。まひろ役の吉高由里子もそうだが、少女時代の芝居から徐々に、自然に年齢を重ねた演技をしているのだ。 昔から『枕草子』を読むたびに、このあと清少納言はどんな人生を歩んだのだろう、定子亡き後、どういった年齢の重ね方をしたのだろう? と想像を膨らませていたので、ファーストサマーウイカがそれを表現してくれて嬉しい。
「君を置きて」の「君」とは
陣定では発言しなかった行成だが、道長と四納言との談合では真っ先に口を開いた。 行成「次の東宮は第一の皇子(敦康親王)であるべきと心得ますが」 他の三名は道長の孫である敦成親王(濱田碧生)一択となるが、行成には無理に歩調を合わせずともよいとなった。道長の前から退出した後、 公任「おそらく崩御の卦も出ておるのだろう」 行成「言霊を憚って道長様は口にされなかったのだと思います」 言霊。言葉そのものに霊的な力があると信じられた当時、不吉な言葉を発すれば現実のものとなってしまうからという行成の指摘に、 斉信「お前(崩御と)言ってしまったじゃないか」 公任「いけないいけない」 ミスったとは全く思っていなさそうな公任。その会話の後に力強く「崩御」と口に出す俊賢。へええ、俊賢は肚決めてるんだなあという顔の斉信。 40話のサブタイトルは「君を置きて」。後述する和歌の一節であるが、この場面で他の意味合いも感じた。「君」とは様々な意味があり、そのひとつは君主、天子。病に苦しむ一条帝とその意志を置き去りに、廷臣たちの思惑が動く。 そして一条帝は譲位を決心し、道長に東宮・居貞親王(木村達成)との対面を望んだ。 居貞親王「帝はそれほどお悪いのか」 隠しきれない喜びが見えて不謹慎な……と言いたいところだが、帝が在位25年なら、この人も東宮として25年を過ごした。帝よりも年上の彼が、帝となって世を治めたいと待っていたとすれば長すぎる年月だ。 そして居貞親王の妃、道長の次女・姸子(きよこ/倉沢杏菜)の買い物熱が上がっている。道長は、左大臣として、父として姸子の贅沢を戒めるが、政略結婚の道具となったのだからこれ以上我慢はできないと口ごたえされる。まあ、そりゃそうだ。我が子がみんな親の意のままに動くと思ったら大間違いである。
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