腰を傷めて交通誘導員にも嫉妬心を抱く…心不全の疑いが浮上した大藪春彦賞作家68歳に芽生えはじめた「淡い恋心」【「鶯谷」第二十三話#2】
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なぜこんなに待たされるのか
腰の痛みに耐えながらシャッターが上がるのを待った。 9時になってシャッターが上がった。 10番目くらいに入った私は待合室の席を確保するのにも難儀した。 杖に気付いた親切な方が譲ってくれた。 相手も老人であったが厚意に甘えた。 しばらく待たされて別室に呼ばれた。 心電図だった。 次はレントゲン撮影だ。 しばらく待たされて医師が来た。 (このクリニックにはレントゲン技師もいないのか) 呆れた。 医師がレントゲン技師を兼務しているのだ。 (待合室にあれだけの患者が待っているのに……) 呆れて当然であろう。 かたちばかりの操作を終えて、医師が診察室に戻った。 「やぁやぁ、お待たせしましたね」 診察室で別の患者に愛敬を振り撒く医師の声が聞こえる。 「それでは次の検査ですね」 看護師に促された。 エコー検査だ。 「上半身裸になって下さい」 指示されてシャツを脱いだ。 「ちょっと冷たいですよ」 看護師が私の身体にゼリーを塗った。 「先生が来られるまで、シーツを掛けておきますね」 薄いシーツを掛けてくれるが、冷えを緩和するほどではない。 待たされた。 隣接する診察室からは医師の愛想のよい声が聞こえる。
不整脈ではなく心不全の疑い
他の患者と談笑している。 寒さに震えながら待たされた。 10分程度だったかも知れないが、かなりの時間に感じられた。 「それではエコー検査をしますね」 ようやく医師が現れ、形ばかりの(私にはそう感じられた)エコー検査が終った。 「それではシャツを着て待合室でお待ちください」 無言で立ち去った医師ではなく看護師に指示された。 (流れ作業じゃないか) 被害妄想かもしれないが、そう感じずにはいられなかった。 相変わらず待合室は満席であったが、今度は直ぐに呼ばれた。 「いやぁ、検査してよかったですよ」 医師が笑顔でいった。 「タダの不整脈でなく、心不全の疑いありでしたね」 プリントアウトした用紙には数字が並んでいた。 そのひとつに〇をつけて医師が『心不全』と手書きした。 「これまでの血栓予防薬では不安です。新しい薬を出しておきましょうね」 心不全―― 医師の言葉に動揺した。
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