米当局、テスラの運転支援機能を調査 事故原因究明
米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)は、米テスラの高度運転支援システム「フルセルフドライビング(FSD)」を搭載した電気自動車(EV)の安全性に関して予備調査(Preliminary Evaluation)を行っている。NHTSAはこれまでに、FSDが作動中の衝突事故4件を特定している。そのうちの1件は死亡事故だった。いずれも視界不良の状況で発生しており、NHTSAはFSDがそのような状況に対応できなかったのではないかと疑っている。 ■ 調査対象は240万台、事故原因はFSDか? 対象となる車種は2016~24年式の「モデルS」及び「モデルX」、17~24年式の「モデル3」、20~24年式の「モデルY」、23~24年式の「サイバートラック」。オプションでFSDを搭載できる全てのモデルが対象で、合計台数は約241万台となる。 米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)や米CNBCによると、NHTSAはテスラのFSDシステムに関する調査において以下の点を重点的に評価する。 (1)強い日差し、霧、粉じんによって引き起こされる視界不良の状況を制御システムが適切に検知し、対応できるかどうか、(2)FSDが関与した他の事故の原因、(3)FSDシステムに対するソフトウエアアップデートのタイミング、目的、追加された機能、及びその安全性をテスラがどう評価したか、の3点である。 NHTSAは、自動車メーカーの運転支援システムが使用された際に発生した衝突事故を調査している。テスラについては、標準的な運転支援システム「オートパイロット」使用時における事故も追跡している。CNBCによれば、NHTSAは24年10月1日時点で、これらテスラの運転支援システムが衝突の30秒前から作動していた1399件の事故を確認している。そのうち31件は死亡事故だった。
■ サイバーキャブや進化版FSDの計画 テスラは先ごろ、米西部カリフォルニア州ロサンゼルスでイベントを開き、人工知能(AI)を搭載したロボタクシー「Cybercab(サイバーキャブ)」を公開した。ハンドルもペダルもない完全自動運転のEVで、26年の生産開始を目指している。 このとき併せて、FSDをより高度に進化させ、人間が介在しなくとも走行できるシステムを、モデル3とモデルYに搭載すると発表した。サイバーキャブの生産開始より前の25年にも米南部テキサス州とカリフォルニア州で、進化版FSDを稼働させる計画だ。 ■ 投資家を失望させたイベント しかし、WSJによれば、テスラはこのイベントで自動運転に関するより詳細な事業計画や、それに関する業績目標を示さず、投資家を大きく失望させた。マスク氏は「許可された地域でのみ運転手なしのタクシーサービスを提供する」と述べたが、規制上のハードルをどのように克服するかについての詳細を明らかにしなかった。 NHTSAによるFSDの調査は、このイベントの1週間後に分かった。NHTSAは今回の調査を予備調査としている。今後の進展次第では正式調査となる可能性もあり、その場合、投資家は一層落胆することになる。
小久保 重信