「たった1分で認知症の診断ができるアプリ」「世界の名医の手技をVRで学べる」…いま医療現場で進む「デジタル化」がすごすぎた!
マイナ保険証とは違う「医療のデジタル化」
これまで医療のデジタル化といえば、2000年に導入された電子カルテや最近話題のマイナ保険証などが真っ先に思い浮かぶ。ところが生成AIが現代人の仕事やライフスタイルを変えている昨今、医療の現場では、私たちが想像しているより大きな変化が起きていた――。 【一覧】えっ、あれも…飲んでも効かない「サプリ」はこちら 毎年、デジタル業界の最新情報を発信するレポート、「DTx(デジタルセラピューティクス)INDUSTRY TRENDS 2024 国内デジタル医療市場の実態と展望」を作成している株式会社メディアシークのビジネス開発部リーダー・二重作亮太さんは、進化が著しい現状について、こう話す。 「現在、世界各国でアプリなどのソフトウェアで疾病の予防・診断・治療を行うDTxの製品が次々と研究開発、承認されており、注目が高まっています。日本でも『高血圧』や『不眠障害』などにおいて治療用アプリが承認されています。 デジタル医療のキーワードの1つとしては、“医療の日常化”が挙げられます。スマートフォンやウェアラブル端末から取得された個人の日常データを用いて、デジタル技術が個人に最適化された医療サービスの提供を助けることになっていくと言われています。 また、診断や治療などの医療サービスを受けられる場所も病院から家や職場などの日常シーンに広まっていくことが予想されます。その具体事例として、音声認識AIを用いたスマホ診断サービスや、VRを活用した心理療法を提供するサービスなどがあります。 先行する海外ではゲームベースの治療サービスや、脳の状態をモニターしてコンディショニングを促すサービスなどが既に医療として認められています」 はたして医療のデジタル化によって、具体的にどのようなことができるようになるのか。サービスを開発している企業を訪ねてみた。
たった1分で認知症診断へ
東京都港区に本社を構える株式会社ExaMDでは、スマホに入れたアプリを使ってわずか1分で認知症の診断ができる画期的なアプリを開発し、2026年の実用化を目指している。 厚生労働省の調査によると、2022年の認知症患者数は約443万人。有病率は12.3%で、これは高齢者の8人に1人の割合だ。今後さらに高齢化社会が進むにつれ、認知症患者の数はますます増加し、 医療機関を受診する人数も増えるため、対応の効率化が必要とされる。 現在、医療機関で使用されている認知症の診断ツールは、MMSE(ミニメンタルステート検査)など、国際的に用いられている神経心理検査である。 MMSEは紙ベースで実施され、心理士やドクターの質問に患者が答えていくもので、所要時間は平均10分から15分ほど必要とされる。しかし、ExaMD社のアプリを使用すると、1分間、スマホに向かって話し続けているだけで、95%の精度で認知症の診断ができるという。 操作方法もスマホに慣れている人であれば、いたって簡単。アプリをダウンロードし、画面上に表示される「最近楽しかったことは?」などの質問に1分間、答え続けると、 画面上に「良好と考えられる」「機能低下の可能性がある」などの診断結果が示される。 自宅でも短時間で気軽に診断できるため、医療スタッフの時間や手間の負担が軽減され、より多くの患者さんの診察が可能になるのだ。 このアプリがどのように作られたのか。開発会社のExaMD代表取締役社長、羽間康至さんが説明する。