南こうせつ「70歳で大きな家からコンパクトな平屋に建て替えて。今後は、先だった仲間の分まで頑張る。声が出なくなったら、キーを3つ下げた『神田川』も味わい深いのでは」
現代は情報社会と言われます。情報からちょっとでも目を離した途端、孤独になってしまうという危機感を抱えながら生きている人が多い。ただ、地に足がついていないような生き方をしていては、たとえ経済的に豊かになっても心は満たされないでしょう。 だったらどうすればいいのかといったら、僕は感じる力を養うことだと思います。あ、春の香りがするとか、初夏の風って気持ちいいよねとか。自然と呼吸をあわせることが必要だと思って、ずっと生きてきました。 その意味で言うと、花見が好きな日本人には希望があると僕は思っているんですよ。満開の桜に思わず見とれたり、ちょっと一杯飲みたくなる感性がある限り、人は大丈夫だなって。 人間、死ぬときは死にます。どうせ最後は神様任せなんですから、自分の人生を天に任せきりましょうよ。ただし、精一杯に生きたうえで、というのが大切なところ。僕はそうやって、この人生を生ききろうと思っています。 いまのところ、「神田川」は昔と同じキーで歌えています。でも「こうせつも声が出なくなったね」と言われるときがきたら、それはそれ。キーを3つぐらい下げた「神田川」も味わい深いのではないでしょうか。 同世代の人たちが自分も頑張ろうと感じてくれれば大いに意味のあることだと思いますし、かくなるうえは、堂々と枯れてやろうと決めています。 (構成=丸山あかね、撮影=洞澤佐智子)
南こうせつ
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