歯磨きとは「除菌」だ!「うんち」より菌密度が高いプラークを除去し、虫歯・歯周病に勝つ「おとなの歯磨き」とは
歯磨きというと、口臭予防や食べカスの除去と考える人もいますが、これらはあくまでおまけ。 歯磨きとは、虫歯菌と歯周病菌など、病原細菌を減らすためにおこなうもの。つまりは除菌こそが歯磨きの大切な本質なのです。 ■ プラーク(歯垢)は最初は無害だが徐々に有害化する 皆さんもよく知るズキンズキン痛む黒くて大きな穴が空く虫歯。一体、どのように作られていくのでしょう? そもそも虫歯を作り出しているのは、その名の通り「虫歯菌」です。私たちの口内にいる何億・何兆もの菌は、実は生後間もない時期には、ほぼ存在しません。多くの菌は、生後6カ月頃の乳歯が生え始めるタイミングで両親などから感染しはじめ、歯に付着していきます。 もっとも感染するのは、生後18~30カ月ごろ、特に奥歯の生える2歳半頃は要注意です。 歯の表面はツルツルしているのにどうして菌がくっつくのか疑問に思うかもしれませんが、歯の表面には歯を守るための唾液成分でコーティングされた「ペリクル」という薄い膜が張られています。このペリクルに無害な菌が付着し、だんだんと密集していきます。 このように菌が密集している状態を皆さんも聞き馴染みのあるプラーク(歯垢=しこう)と呼びますが、このときはまだ、見覚えのある白いネバネバした物質ではなく、人体への害もほとんどありません。しかし、時間を追うごとに、プラークの上に虫歯菌や歯周病菌がくっつき、より強固で有害なプラークへと変貌(へんぼう)します。 無害なプラークは簡単に除去できますが、有害なプラークに発展すると、ふだんの歯磨きでは落とすことのできない厄介者へと変わってしまいます。 無害から有害で厄介物へと変わるプラーク。この変貌には虫歯菌のある特性が強く影響をしています。
■ 虫歯は口内の酸化という化学変化が招く 無害なプラークの上に付着した虫歯菌はここから大活躍します。 虫歯菌は糖を主食としていますが、これを食べたとき「グルカン」という物質を出します。このグルカン、とてもネバネバしていて、プラークと歯をより強力にくっつけたり、菌同士のつながりをより強くしていくのです。 こうして、プラークは、皆さんがよく知っている、あのネバネバの塊になっていき、数多くの菌をくっつけて、プラーク内でどんどん成熟していきます。 プラークを形作るグルカンは、水に溶けない不溶性。そのため、菌の働きを抑制する唾液もこの中に入っていくことができないため、虫歯菌を始めとする菌たちにとって、プラーク内は完全な安全地帯。ここで菌たちは、ぬくぬくと育ち、どんどん繁殖していきます。 こうして、口内にはどんどんプラークが育っていきます。プラークの成長速度は思った以上に早く、一週間も歯を磨かないでいると、すべての歯がプラークまみれになるほど素早く成長してしまうのです。 これを抑えるために歯を磨くのですが、水に溶けず、粘ついているプラークは、多くの人がおこなっている1分~3分程度の歯磨きでは、どうしても磨き残しが出てしまい、歯にはつねに有害なプラークが着いた状態が維持されてしまうのです。 虫歯菌は、糖を食べてグルカンを出すことによってプラークを粘つかせ、落ちづらくさせますが、このとき、グルカンだけでなく「乳酸」という物質も作り出します。 乳酸は、その名の通り、酸性の性質を持つ物質で、糖類が口に入ると、数分でプラーク内は酸性になってしまいます。 エナメル質は削れにくく傷つきづらい、すなわちとても硬い物質です。虫歯というと、歯が削れてなくなっていくようなイメージを持っている人もいるかもしれませんが、虫歯というのは、物理的な力ではなく、酸による化学的な変質によって削れたような状態を作り出し、黒く穴の空いた虫歯となるのです。 そして、このまま虫歯を放置すると、穴はどんどん広がり、やがて神経まで到達し、夜も眠れぬ地獄の痛みをあなたに与えることとなるのです。この状態のまま歯科医院に行くと、歯の神経を抜かなければなりません。歯の神経を抜いてしまうと歯は死んでしまい栄養が届かなくなり年齢を重ねるごとに、欠けたり、折れたりとボロボロになりやすくなるのです。 ちなみに「歯を磨きすぎると歯が削れる」と心配する人もいらっしゃいますが、エナメル質は鉄より硬い物質です。鉄を歯ブラシでこすっても削れないように、歯磨きで歯が削れることはないので、安心してください。 (次ページからマンガをお楽しみにください)